角膜疾患

[No.269] 外傷性角膜剥離に対する0.3%ヒアルロン酸ナトリウム点眼薬の長期使用の有効性:論文紹介

外傷性角膜剥離に対する0.3%ヒアルロン酸ナトリウム点眼薬の長期使用の有効性:無作為化対照パイロット試験

その意味は:「ヒアレインは遷延性角膜上皮剥離の再発予防には効果がない」ということでしょうか?角膜を針で穿刺して上皮の接着を助けるという方法もあります。

A Close Look at the Clinical Efficacy of Rho-Associated Protein Kinase Inhibitor Eye Drops for Fuchs Endothelial Corneal Dystrophy

Kinoshita, Shigeru; Colby, Kathryn A.; Kruse, Friedrich E.

Cornea. 40(10):1225-1228, October 2021.

概要

目的: 外傷性角膜上皮剥離(TCA)は、角膜上皮とその下にある半接着斑接合部の両方に損傷を引き起こします。ヘミデスモソーム接合部の回復の遅延は、症候性エピソードを引き起こします。ただし、ヘミデスモソーム接合部の回復に推奨される治療法はなく、TCA治療には空白期間が存在することを示しています。この研究では、TCA治癒の空白期間中のヘミデスモソーム接合部の回復に対するヒアルロン酸ナトリウムの長期使用の有効性を調査しました。

方法: この前向き無作為化対照パイロット研究では、TCAの60人の患者が登録されました。患者は、角膜上皮が完全に回復した後、0.3%ヒアルロン酸ナトリウム点眼薬を3か月間(HAグループ)または観察のみ(対照グループ)受けるように1:1でランダム化されました。一次および二次転帰は、それぞれ12か月の追跡期間中の主要および軽微な症候性エピソードの累積発生率でした。

結果: 56人の被験者(HAグループで29人、コントロールグループで27人)が12か月のフォローアップを完了しました。主要な症候性エピソードの12か月の累積発生率は、HA群で20.7%、対照群で18.5%でした。2つのグループ間に有意差は見つかりませんでした(P = 0.838)。軽度の症候性エピソードの12か月の累積発生率は、HA群と対照群でそれぞれ48.3%と37.0%であり、有意差はありませんでした(P = 0.397)。

結論: TCA患者の約5分の1は、1年間のフォローアップで再び主要な症候性エピソードを経験します。ヘミデスモソーム接合部の回復期間におけるヒアルロン酸ナトリウムの長期使用は、それに利益をもたらさない。

ーーー以前の記事再訪ーーー

再発性角膜上皮剥離,反復性角膜糜爛、遷延性角膜上皮剥離

12210220才台の女性が目やにを出しながら片眼を赤くして受診しました。昨晩は当直で、当直明けにこのような目やにと眼の痛みを発症したのは何回目かなのだそうです。ずっと症状が続く訳ではなく、治療をすると数日で直るのですが、また数か月すると同じエピソードを起こすのだそうです。細隙灯で見ますと目やにと思ったのははがれた上皮の丸まったもので、一部が左目角膜の外上4分の1に接着していて、その部分の角膜は上皮がはがれています。これは再発性角膜上皮剥離(角膜糜爛)でしょう。

これが何であるのかをしらべて見ました。handbook of ocuklar disease tratment(⇒リンク)の角膜上皮剥離と反復性角膜糜爛
に詳しい解説があります。
少し解りやすい単語に置き換えて説明をしてみます。

上皮剥離
この疾患は羞明、眼球運動に伴う痛み、流涙、眼瞼痙攣, 異物感、視力低下を訴えて受診し、瀰漫性の角膜浮腫と上皮の断裂を見るものです。。重症例ではデスメ膜の皺を見ることもあります。病巣はフルオで染めれば角膜の他の部分より明るく緑に染まります。

反復性糜爛
反復性の角膜糜爛(Recurrent corneal erosion: RCE) は繰り返しておきる角膜上皮の断裂が特徴です。多くの症例では前に起きた爪などによる角膜の機械的な外傷があります。

この病気の訴えとしては
* 朝、目が覚めたとき、突然眼が痛くなった
* 以前にも同じ症状(突然の激痛)があった
* 眼のけがをしたことがある
(例えば、葉先が目に入り、くろめにキズができた事がある) 等がこの疾患の共通項です。

原因:黒目の表面(角膜上皮)が角膜実質に接着する部分での接着不良が原因です。

診断:症状の再発時には、角膜の上皮が一部めくれているので、その診断は比較的容易です。痛みが止まっている時には、眼の検査用薬液を点眼して調べると、角膜の上皮の一部に接着不良の所見が観察されることがあります。

。一般的治療:再発時には、抗生剤入りの眼軟膏を点眼して、安静に努める事とされています。 圧迫ぎみに眼帯を当てるのも有効ですし、角膜保護のコンタクトレンズ(アキビューの一週間用など)も良い模様です。

痛みが消失した後は、ヒアルロン酸ナトリウム点眼液、低濃度ステロイド点眼液などを点眼します。就寝前には抗生剤眼軟膏を使うと良いです。

日常の注意点:起床時はゆっくり開瞼するようにする。(果たしてこのような注意で角膜上皮がはがれるのを防げるかどうかは疑問ですが。)

手術/外科的治療:角膜表層穿刺について
角膜表層穿刺が本疾患、および糸状角膜炎とよばれる角膜の病気に対する再発防止の治療法です。但し、術後に瘢痕(はんこん)とよばれる”跡”が残りますので、角膜中央や中央に近いところ(瞳孔領)に病変がある場合、この処置はできません。

実際の手技として、点眼麻酔の後、細い注射針(30ゲージ)で接着不良の部位を穿刺します(角膜の表面だけ)。外来処置です。術後、抗生剤眼軟膏を点眼し、圧迫眼帯をします。

この処置の後、翌日に診察を受けて戴きます。接着不良部が残っていれば、再穿刺することがあります。通常、1-2回で完治します。

https://www.kiyosawa.or.jp/uncategorized/35875.html/

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