高齢アジア人の「未診断の眼の病気」が多いという最新研究 ― 早期発見の重要性
シンガポールで行われた最新の大規模研究(JAMA Ophthalmology, 2025年)によると、高齢者の3人に1人以上が「自分では気づいていない加齢に伴う眼の病気」を抱えていました。対象となったのは、中国系・マレー系・インド系のいずれも含む60歳以上の住民で、約1,900人が詳細な眼科検診を受けています。
■ 研究が注目した4つの病気
調査対象になった疾患は、いずれも視力低下の主要な原因です。
① 加齢黄斑変性(AMD)
② 糖尿病網膜症(DR)
③ 白内障
④ 緑内障
いずれも早期発見で視力を守れる病気ですが、自覚症状が出にくいため「気づかないまま放置」されやすいのが特徴です。
■ どのくらい未診断の人がいたのか
結果は驚くべきものでした。
全体の35.8%が、少なくとも1つの未診断の眼疾患を保有していた のです。
多くは1種類の病気でしたが、中には2〜3種類の疾患を同時に抱える人もいました。
病気ごとの未診断率は次の通りです。
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加齢黄斑変性(AMD):約90%
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糖尿病網膜症DR:90%
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白内障:40%
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緑内障:48%
特にAMDとDRは9割が未診断で、「気づかないうちに進行する病気」の典型といえます。
■ 未診断になりやすい人の特徴
共通して見られたリスク要因は以下の通りでした。
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60代の比較的若い高齢者
(意外にも70〜80代より未診断率が高い) -
多焦点眼鏡を使用している人
(レンズが快適なため病気に気づきにくい可能性) -
マレー系・インド系の住民
(人種差による医療アクセスや意識の違い)
日本でも「まだ若いから大丈夫」と思ってしまう60代前半の方に見逃しが多いのは同様です。
■ 見逃されると何が起こるのか
未診断のまま放置すると、次のような不利益が明確に増えることも示されました。
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視覚障害になる確率が約2.5倍に増える
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健康・視覚に関わる生活の質(QOL)が2~5%低下
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医療費が1.7倍に増加する
つまり、早く見つけて治療した方が、視力だけでなく生活や家計の面でもメリットが大きいということです。
■ なぜ今、地域の眼科検診が必要か
従来の調査は10年以上前のものでしたが、今回の研究はコホート規模が大きく、リアルタイムのデータが得られた点に大きな意義があります。この結果は次のことを強く示唆しています。
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「まだ若い高齢者」ほど検診の優先度を上げるべき
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特定の背景を持つグループでは、より積極的な検診啓発が必要
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自覚症状がなくても定期的な眼科検診を受けることが重要
これは日本にもそのまま当てはまります。緑内障やAMDは初期には全く症状がなく、気づいたときには治療が難しいこともあります。
■ 清澤眼科からのメッセージ
「見えているつもり」でも、病気は静かに進行していることがあります。
特に60歳を超えたら、1年に1回の眼科検診を強くおすすめします。
OCT(光干渉断層計)や眼底カメラでの検査は短時間で負担も少なく、緑内障・AMD・糖尿病網膜症の早期発見に大きく役立ちます。
今回の研究結果は、地域での定期検診や医療啓発の重要性をあらためて示すものです。当院でも、皆様の視力と生活の質を守るため、早期発見に全力で取り組んでまいります。



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