眼瞼けいれんにおける感覚過敏症状(羞明、疼痛)に対する直接の治療は有りますか(臨床的質問No.54 治療関連)
回答:羞明や疼痛などの間隔過敏症状は、ボツリヌス治療にてある程度軽減することが知られている(1:強く推奨、B:効果に中等度の確信が持てる)。然し完全に治癒させることは困難で、遮光眼鏡の使用やドライアイ治療が行われ、有効性が示されている(1:強く推奨、C:効果に倒する確信は限定的である)
解説:眼験けいれんにおける感覚過敏症状に対しても、ポツリヌス治療の有効性が示されている。NEIVFQ-25を用いた調査結果では、ポツリヌス治療後に眼病や視機能関連QOLが改善したと報告されている、また頭痛に対する効果に関する報告では、眼驗けいれん17例中10例(57%)で認められた頭痛が、ポツリヌス治療で全例改善し、痛みのスケールであるVAS (visual analog scale)は7点から1点に改善したとされている。
片頭痛に伴う差明や、ドライアイ症状に対してもボツリヌス療法の有効性が示されており、ボツリヌス療法が感覚過敏症状に有効である可能性は高い。しかし、開瞼困難や瞬目過多といったジストニアに対しては、ほとんどの症例で効果があるのに対し、感覚過教症状の治療効果は顕著とはいえない。これに対して、遮光眼鏡の装用が自覚症状改善に効果的であるとされている。ランダム化されたクロスオーバー試験では、特にFL-41というローズ色の遊眼鏡が推奨されている、本邦では入手困難であるが、HOYA レティネックスのPYや東海光学のFLが、それぞれ分光率が低く、眼験けいれんの感覚過を抑えることが期待される。また本症の感覚過敏の原因の一部としてドライアイが関与している場合は、ドライアイ点眼薬やプラグ挿入などの治療法で効果が期待される。
清澤の追加のコメント:眼瞼痙攣に羞明や疼痛などの過敏症状を訴える患者さんは多い。診断が眼瞼けいれんであれば、まずボトックス投与を勧めて、同意が得られればこれを行う。次に羞明には遮光眼鏡処方ないし斡旋をする。色の強い遮光眼鏡を嫌がる患者さんもいるが、羞明抑制を求めるか、外見を重視するかは患者さんの選択で良い。ドライアイが有ればドライアイの点眼(ヒアレイン、ジクアス、レバミピド)だけではなく、液体コラーゲン製の涙点プラグの涙小管への注入(上下左右4点)を勧めている。私は現在シリコン製涙点プラグは用意していない。コラーゲンプラグの有効期間は普通2-3か月程度であるが、時期が来たからと繰り返し行うのではなく、患者さんの希望により再度行うかどうかを検討する。
用語:
◎NEIVFQ-25:(米国国立眼科研究所の 25 項目の視覚機能アンケート。NEI VFQ–25は視覚に関連した健康関連QOL(生活の質)を測定する尺度です
◎VAS(visual analog scale):。白紙に 100mm の線を引き、その左を全く痛くない状態、その右をこれまで 想像できる最高の痛みとしたときに、現在感じる痛みを線を引いて示す方法である。対象者に線を引かせた後、測定者が定規を用いて、左から何ミリメートルの所に線を引いたの かを記録する。
◎遮光眼鏡:遮光眼鏡はまぶしさの要因となる500nm(ナノメートル)以下の短波長光(紫外線+青色光線)を効果的にカットし、
それ以外の光を出来るだけ多く通すよう作られた特殊カラーフィルターレンズです。
まぶしさにより白く靄(もや)がかっているように見える状態を、短波長を取り除くことでくっきりさせ、コントラストを強調させます。
◎コラーゲンプラグ:液体コラーゲンプラグを用いたドライアイの治療では、涙点からの涙の排出量を調節するのにコラーゲンを用います。 このコラーゲンは、冷たい状態では液状で、体温程度に温めるとゼリー状に固まる性質があります。このコラーゲンを細い管で涙点から続く涙小管へ注入することで、涙の排出量をコントロール。 ドライアイの症状を改善するのがこの治療法です。
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