ボトックス投与の副作用としての血腫・皮下出血の予防と対応
眼瞼下垂や複視などに比べると重篤ではありませんが、眼瞼痙攣に対する眼周囲におけるボトックス投与にしばしばみられる合併症に眼周囲の皮下出血があり、患者さんは相当気にされます。私たち眼科医もこの合併症を最小限にするためにいくつかの工夫をしています。私が取り入れている方法としては、まず、前回の施注時に出血が見られた患者さんでは、アイスパック(熱冷まし用のアイスノンなどの製品)で数分患部を冷やし、皮膚の血管を収縮させておくことを試みることができます。使用する注射針は27ゲージよりも30ゲージを取り寄せて使うとよいでしょう。注射終了直後に皮下に小さな血種ができるのを少しでも防ぐため、看護師または本人の手を用いてティッシュペーパーでしばらく圧迫することも推奨できます。もし帰宅後に十分に止血が完了した皮下出血に気が付いたならば、入浴時などに微温タオルで5分ほど温罨法を施して、皮下に出血した血球の溶血と吸収を促すと良いでしょう。うまく行えば通常の半分の4-7日程度での吸収が期待できるでしょう。私の考えでは、適応禁忌ではありませんが、下記の文にもある通り、抗凝固作用のある薬を使っている患者さんは特に施術時の出血には要注意です。私の実感としては皮下出血の発症は下記の記載にある1%というよりは5%程度の頻度がありそうです。皮下出血が目尻のカラスの足跡と呼ばれる皮膚の柔らかい部位に起きやすいという事も実感しています。
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「美容処置に焦点を当てたボツリヌス毒素A型に関連する有害事象の管理」には以下の記載があります。: (https://www.researchgate.net/publication/7799908_Managing_Adverse_Events_Associated_with_Botulinum_Toxin_Type_A_A_Focus_on_Cosmetic_Procedures)
筋肉内注射は血腫を引き起こす可能性があります。皮下の斑状出血は、BTXA注射のもう1つの考えられる影響です。しかし、入手可能な証拠は、注射部位での血腫と斑状出血がBTXA注射の1%未満で発生することを示唆しています。
それにもかかわらず、止血および血栓停滞に影響を与える出血性疾患または薬物療法を有する患者は、筋肉内(BTXA)注射で治療されるべきではありません。
適切な技術を用いても、これらの領域に注射を受けている患者の眼瞼軟部組織および眼窩周囲組織で斑状出血が容易に発生します。目尻にみられる「カラスの足跡」状の皺に対するBTXAのプラセボ対照試験では、患者の11〜25%に皮下出血が見られ、プラセボ群でも同様の割合が見られました。この悪影響は、注射のたびに、単独で、または冷湿布と組み合わせて、注射部位に直ちに圧力を加えることによって最小限に抑えることができます。
患者は、BTXA注射の10日前に、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬だけでなく、トコフェロール(ビタミンE)またはギンコビロッタ(銀杏の葉)も中止する必要があります。さらに、喫煙者はBTXA注射後により多くの出血を示す傾向があるため、注射の少なくとも7日前に喫煙を停止することをお勧めします。
ーーーーアイキャッチ画像の出典:ボトックス後の皮下出血の記事 https://www.dailymail.co.uk/femail/article-3098895/I-looked-like-d-punched-Woman-58-left-BLACK-EYE-having-botched-350-Botox-treatment-look-good-25th-wedding-anniversary.htmlーーーーー
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