眼瞼痙攣

[No.2570] 設問:本態性眼瞼けいれんの発症を予防することはできますか: 設問 31

臨床の設問31(症状・兆候・危険因子)

設問:本態性眼けいれんの発症を予防することはできますか

回答:本態性眼瞼けいれんについては病態メカニズムの解明が不十分であるため、発症を明確に予防する方法は確立されていない。しかしながら、田舎での生活(事務作業やコンピューター使用頻度の軽減)、カフェイン摂取、強いストレスの回避、高緯度地域への居住などが予防に関与する可能性がある。(2C=弱く推奨し、エビデンスの強さは限定的

解説:

発症の予防に関する明確なエビデンスをもった報告は今のところみられない。一方で、眼瞼けいれんの発症に関与すると考えられる介入可能な生活・環境上の因子は知られており、予防に寄与する可能性がある。

眼験けいれん患者の職業の調査では事務職員、教員が約半数を占めており、ホワイトカラーの労働者に多いことが示されている。別の1,325 人の台湾で行われた大規模な疫学的調査でも、ホワイトカラーの労働者がブルーカラーの労働者よりも有意に多く、田舎よりも都市部での発症が多いことが報告されている。事務作業やコンピュータ使用などの都市型のライフスタイルが発症に関与し、逆に田舎での生活が予防に寄与する可能性がある。

166例の眼験けいれん患者の疫学研究から、コーヒーが眼験けいれんの発症を抑制すると報告されている206名の眼瞼けいれん患者と同数の健常者を遺伝的に解析した研究において、カフェインの代謝酵素であるCYP1A2の遺伝子多型が眼験けいれんの発症に関与していることが近年報告されており、コーヒー摂取と眼験けいれん発症の困果関係解明に大きく寄与すると期待される。ただし、カフェインについてはCYP1A2の活性型によって生体への反応が異なる可能性が示されており、CYP1A2の型によって高血圧や心血管疾患に対して危険度が増加する場合があることが指摘されている。ドライアイについても、CYP1A2の多型によってカフェイン摂取で涙液量の増加に差がみられることがわかっている。したがって、眼瞼けいれんとカフェイン摂取についても遺伝子多型による反応性の差異が存在する可能性があると考えられる。喫煙については、眼験けいれんの発症を抑制するという報告がなされたが、後に同一施設から発症への関与に有意差は認められなかったとしている。

眼験けいれん患者の多くが発症前に強いストレスを感じていたという報告があり、離婚や家族の死、病気、仕事上の問題などが関わっていたと報告されている。したがって、このようなライフイベントに伴う強いストレスを回避することが発症の抑制に関与する可能性があると推測される。

高緯度地帯の方が日照時間が短くなるために眼験けいれんが発症しづらくなる可能性が指摘されている、予防するという意味では居住する国を変えるのは簡単ではないが、日照時間が長い地域では差明を生じやすい環境にあることが一因かもしれない。

清澤の追加のコメント:基本的には家族発症例は少ないので、発症予防という言葉が設問に適切かどうかに疑問はあります。此の回答と解説を読むまで、コーヒーの飲用が眼瞼けいれんの発症に抑制的に働くという事は知りませんでした。 しかし、カフェインの代謝酵素であるCYP1A2の遺伝子多型が眼験けいれんの発症に関与しているというのは、単に一つの説として聞き流すのがここでは無難でしょう。ストレスが眼瞼けいれんの発症の促進因子であったり、手術を受けたことをきっかけに発症する患者が居ることはしばしば経験するところです。また、ストレスを誘因としてベンゾジアゼピンなどの向精神薬を服用し、それが薬剤性眼瞼けいれんの原因になっていることは多いです。治療に当たっては、薬剤誘発性の眼瞼けいれんの可能性も十分に聞き出すことが重要です。日照時間との連想では遮光眼鏡は軽度の眼瞼痙攣を抑止する効果なら期待できそうです。

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