白内障

[No.3064] 白内障手術を受けた患者さんにおける後発白内障についての説明

(他院で)白内障手術を受けた患者さんにおける後発白内障についての説明

白内障手術を受けた患者さんの中には、手術後に「後発白内障」が原因で視力が低下するケースがあります。今回の患者さんも、視力低下に加え眼底写真が曇っていることが確認されたため、紹介してYAGレーザー後嚢切開術を受けることを勧めたいと考えています。以下、後発白内障の症状、発生時期、頻度、眼科的な所見、治療法、治療後の合併症についてご説明します。

後発白内障とは

白内障手術後に「後発白内障」が発生することがあります。これは通常の白内障とは異なり、手術で眼内レンズを入れた後に、レンズの後ろにある袋(後嚢)が曇ることで視力が低下する状態です。このため、後発白内障は「二次的な白内障」とも言われることがあります。

症状

後発白内障が進行すると、視界がかすんだり、物がぼやけて見えたり、光を眩しく感じることがあります。手術直後は視界がクリアであっても、後発白内障が進行すると再び視力が低下する場合があります。

発生時期と頻度

後発白内障は、白内障手術後の数ヶ月から数年後に発生することがありますが、一般的には術後1〜2年後に多くみられます。発生頻度は手術方法や眼内レンズの種類、患者さんの体質によりますが、全体としては10〜30%程度とされています。近年では、発生率を低減させる設計の眼内レンズもありますが、後発白内障は一定の確率で発生します。

眼科的な所見

白内障術後の眼で視力低下やかすみが認められる場合、後発白内障の可能性が疑われます。眼科の診察では眼底写真や眼底検査を行い、レンズ後部の曇りを確認します。散瞳して細隙灯で観察すると、後嚢の混濁が観察されます。眼底検査で眼底が曇って見えるのも、後発白内障によるものです。

治療法

後発白内障は薬での治療はできません。最も効果的な治療は「YAGレーザー後嚢切開術」と呼ばれるレーザー治療で、曇っている後嚢の部分をレーザーで開くことで視界を改善します。この治療は痛みがなく、短時間で済むため外来で行うことが可能です。術後の視力改善も速やかで、多くの場合、数日以内に視界がクリアになります。

治療後の合併症

YAGレーザー後嚢切開術は比較的安全な治療法ですが、稀に以下のような合併症が発生することがあります。

  • 眼圧上昇:レーザー治療後に一時的に眼圧が上がることがありますが、通常は点眼薬でコントロールできます。
  • 網膜剥離:極めて稀ですが、レーザーの刺激により網膜剥離が発生することがあります。特に強度近視の方にはリスクが若干高まるため、注意が必要です。
  • 前嚢収縮:レーザー照射後に前嚢(眼内レンズの前側の袋)が収縮することがあり、場合によってはレンズの位置が変わる可能性があります。

最後に

後発白内障は、白内障手術後によく見られる合併症の一つですが、YAGレーザー後嚢切開術を受けることで視界が再びクリアになることが期待されます。治療後も定期的に眼科を受診し、目の健康を保つようにしましょう。

追記:

後発白内障(PCO)は、白内障手術後に眼内レンズの後方に新たな混濁が生じる状態で、視力が再び低下する原因となります。この混濁の主な原因は、手術後に残存する水晶体上皮細胞が増殖・変化し、後嚢(眼内レンズの後ろの部分)に沈着することにあります。

後嚢に沈着する物質の起源と成分

  1. 水晶体上皮細胞(LECs):後発白内障の主要な原因は、手術時に残された水晶体上皮細胞が増殖・移行することです。これらの細胞は後嚢に移動し、様々な変性を経て混濁を引き起こします。

  2. 線維化成分:一部の上皮細胞は線維芽細胞へと分化し、後嚢に線維化をもたらします。これにより、光の通り道が阻害され、視力低下の原因となります。

  3. エクストラセルラーマトリックス(ECM)成分:細胞が増殖する際、細胞間にECM(コラーゲンやプロテオグリカンなど)が沈着し、後嚢がさらに不透明になります。

  4. ホウィットナッカーノジュール:一部の上皮細胞は水晶体線維様の形態へ変化し、白い点状の「ホウィットナッカーノジュール」を形成することがあります。

後発白内障の主な成分は、残存水晶体上皮細胞由来の細胞性成分と、その細胞が産生するECM成分が中心です

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