自由ヶ丘1丁目の都市再開発工事現場に今までのキャタピラー付きクレーン(左)と並んでタワークレーン(右)が立ちました。両者の比較を調べてみました。
更に、マストの上に水平に伸びる長いアーム(ジブ)があり、クレーンの先端で荷を吊り上げる形のクレーンをフランスでよく見かけましたが、これが日本にない理由は何でしょうか?
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タワークレーンとキャタピラー付きクレーンの用途と使い方の違い
クレーンは建設現場や工場で重量物を持ち上げ、移動させるために不可欠な機械です。その中でもタワークレーンとキャタピラー付きクレーン(クローラークレーン)は、大型建設工事において特に重要な役割を果たします。これら二種類のクレーンは、それぞれ異なる特性を持ち、適した用途が異なります。以下に、それぞれの構造的特徴と用途、使い方の違いについて詳しく説明します。
1. タワークレーンの特徴と用途
1.1 タワークレーンの基本構造
タワークレーンは、高層建築や大規模な建設プロジェクトでよく使われる固定式のクレーンです。主な特徴は以下の通りです。
- 垂直に伸びたタワー(マスト)と回転するジブ(アーム)を持つ
- 作業エリアが広く、高所作業に適している
- 建設現場に設置し、現場全体をカバーすることが可能
- 一定の高さまで柱が順次追加されていく(クライミング機能)
タワークレーンは、基本的に建設現場に固定されるため、自走することはできません。しかし、建設の進行に合わせてクレーン自体を上昇させる「クライミング機能」を備えており、高層ビルやタワーの建設には不可欠な機械です。
1.2 タワークレーンの用途
タワークレーンは、主に次のような場面で活用されます。
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高層ビルの建設
- 高さ100m以上のビル建設では、地上からのクレーンでは届かないため、タワークレーンが使われる。
- 建設が進むにつれてマストを追加し、クレーン自体を上昇させることが可能。
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大規模な土木工事
- 橋梁やプラント、スタジアムの建設など、広範囲で重機の移動が困難な現場に適している。
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都市部の狭小地での作業
- 都市部の密集した建設現場では、移動式クレーンが作業できるスペースが限られるため、タワークレーンが選ばれる。
2. キャタピラー付きクレーン(クローラークレーン)の特徴と用途
2.1 クローラークレーンの基本構造
クローラークレーンは、キャタピラー(履帯)を持つ移動式クレーンであり、次のような特徴を備えています。
- キャタピラー(クローラー)による自走が可能
- 設置工事不要で、柔軟な配置変更ができる
- 悪路や軟弱地盤でも安定して作業ができる
- 長大なブーム(アーム)を装備することで高所作業にも対応可能
クローラークレーンは、一般的にクレーン自体の重量が大きく、作業時には地面に大きな圧力がかかります。しかし、クローラーによる広い接地面積のおかげで、地盤が軟弱な場所でも安定した作業が可能です。
2.2 クローラークレーンの用途
クローラークレーンは以下のような場面で活躍します。
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橋梁やダム建設
- 長いブームを備え、大型の部材を持ち上げることができるため、橋やダムの建設に適している。
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発電所やプラント建設
- 巨大な機械設備の設置に用いられる。
- 特に風力発電のタービン設置には、大型クローラークレーンが使用されることが多い。
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移動が必要な大規模建設工事
- タワークレーンと異なり、クレーン本体を移動させながら作業できるため、建設現場内での柔軟な対応が可能。
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港湾や造船所
- 造船所での巨大な船体ブロックの組み立てや、港湾でのコンテナ積み下ろし作業に使用される。
3. タワークレーンとクローラークレーンの使い分け
3.1 設置と機動性
クレーンの種類 | 設置のしやすさ | 移動の可否 | 機動性 |
---|---|---|---|
タワークレーン | 設置に時間とコストがかかる | 一度設置すると移動不可 | 固定された範囲内で作業 |
クローラークレーン | 設置不要で即作業開始 | 移動可能(キャタピラーで自走) | 現場内での移動が容易 |
3.2 用途の違い
用途 | タワークレーン | クローラークレーン |
---|---|---|
高層ビル建設 | ◎ | △(通常使われない) |
土木工事(橋・ダム) | △ | ◎ |
大規模プラント建設 | ○ | ◎ |
都市部の狭小地 | ◎ | △ |
移動を伴う作業 | × | ◎ |
軟弱地盤での作業 | △ | ◎ |
4. まとめ
タワークレーンとクローラークレーンは、建設現場での用途に応じて使い分けられます。
- タワークレーンは、高層ビルや都市部の限られたスペースでの作業に適しており、一度設置すると移動はできないものの、広範囲の作業が可能です。
- クローラークレーンは、移動しながら作業でき、特に大規模な土木工事や軟弱地盤での作業に向いています。
適切なクレーンを選ぶことで、建設工事の効率と安全性を高めることができます。
追記:
フランスなどヨーロッパでよく見かける、タワーの上に天秤のように水平の枝が付いたクレーンは、「タワークレーン(塔式クレーン)」の一種で、特に「トップレス型タワークレーン」や「ハンマーヘッド型タワークレーン」と呼ばれるものが多いです。
タワークレーンの特徴
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構造
- 縦に伸びた塔(タワー)の上に、水平に伸びる長いアーム(ジブ)があり、クレーンの先端で荷を吊り上げます。
- アームの反対側にはバランスウェイト(カウンターウェイト)が取り付けられ、重心を保ちます。
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長所
- 狭い敷地でも設置可能:高く伸びるため、都市部の高層建築に適しています。
- 建物の上から作業が可能:高層ビル建設で、下の作業スペースを確保しながら作業できる。
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短所
- 設置・撤去が大がかり:タワークレーン自体を設置するのにクレーンが必要になり、解体時も時間がかかる。
- 風の影響を受けやすい:高所にあるため、強風時には作業制限がかかることがある。
日本であまり見かけない理由
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日本の建築現場の特性
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建設現場が狭く、道路との距離が近い
日本の都市部では建設用地が狭く、タワークレーンのように大型の設備を設置しづらい。
一方、フランスなどでは広い敷地に余裕があるため、タワークレーンの使用が一般的。 -
低層・中層の建物が多い
日本では高層ビルを建てる場合でも、自走式クレーン(ラフテレーンクレーンなど)で対応できる場合が多く、タワークレーンの設置コストをかける必要がない。
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地震リスク
- タワークレーンは強風には比較的強いが、地震には弱いという特性があります。
- 日本では地震が多く、建設中に揺れによってクレーンが損傷するリスクがあるため、特に耐震性を考慮した設計が必要。
- そのため、日本ではより安定性の高いクローラークレーン(履帯式クレーン)やラフテレーンクレーンが好まれる。
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設置・撤去のコスト
- タワークレーンの設置には時間とコストがかかる。
- 日本では短期間での工事が求められることが多いため、設置と撤去に手間のかかるタワークレーンは敬遠されがち。
日本でもタワークレーンが使われるケース
日本でも超高層ビルの建設や、大規模な建築現場(東京の再開発エリアなど)ではタワークレーンが使われることがあります。
特に、都心の高層ビル建設ではタワークレーンが上階へ自動的に伸びていく「セルフクライミング方式」のものが導入されています。
まとめ
- フランスなどでよく見るタワークレーンは、日本では地震リスクや設置スペースの問題からあまり使われない。
- 日本では、狭い現場や地震対策が求められるため、より機動性の高い自走式クレーン(ラフテレーンクレーンやクローラークレーン)が主流。
- ただし、高層ビル建設などではタワークレーンも使用される。
日本とヨーロッパの建設環境の違いが、タワークレーンの普及度に影響を与えているということですね。
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