5月5日はこどもの日――子どもの視力を守るために今できること
5月の連休が近づいてきました。行楽や家族の時間が楽しみな季節ですが、眼科医の立場としては、近年心配なことがあります。それは、「近視を持つ子どもが急増している」ということです。
特にコロナ禍以降、タブレットやスマートフォンを使う機会が急増し、外で体を動かす時間が減ったことも影響していると考えられています。近視は単なる“視力の低下”ではなく、将来の眼の病気につながる可能性のある重要なリスク因子です。
近視は早めに気づき、正しい対策をとることが大切です
当医院では、近視が始まりかけた子どもさんに対して、まずは次の二点を大切にしています。
- 適切な眼鏡やコンタクトレンズを使うこと
見えにくさを放置すると、目を細めたり、姿勢が悪くなったりして、学習や日常生活にも支障が出ることがあります。正確な検査に基づいて、年齢に合った処方を行います。 - 一日2時間以上の戸外活動をすすめること
日光を浴びることは、近視進行を抑える効果があることが世界的に証明されています。外で遊ぶ・歩く・スポーツをするなど、目にとっても心と体にとっても良いことづくめです。
さらに一歩進んだ近視抑制治療もご紹介しています
当院では、上記の基本的な対策に加えて、保険適用外の私費診療になりますが、近視進行を抑える二つの治療法を小中学生にご紹介しています。
① 低濃度アトロピン点眼療法(0.02%)とは?
アトロピンとは、もともと瞳を広げる作用がある目薬ですが、低い濃度で使うと瞳孔を広げることなく、近視の進行を抑える働きがあることが分かってきました。
特に0.02%濃度では、副作用が少なく、小学生にも安全に使用できることが多いとされています。
点眼方法は1日1回、就寝前に片眼ずつ点眼するだけです。
治療を始める目安は、6歳〜12歳前後の近視が始まったばかりのお子さん。進行スピードや生活環境によって使用濃度を調整することもあります。
定期的に視力や眼の状態をチェックしながら、およそ2〜3年続けることで、近視進行を20〜50%程度抑えられるという報告があります。
② オルソケラトロジー(ナイトレンズ)とは?
こちらは夜間に特殊なハードコンタクトレンズをつけて寝ることで、日中の裸眼視力を改善し、近視の進行も抑える治療法です。
レンズの形状が角膜の表面に軽く圧力をかけ、朝には角膜が整い、翌日の日中にはレンズを装用しなくてもよく見えるようになります。
使用の対象は主に軽度〜中等度の近視(−1.00D〜−4.00D程度)のお子さん。
年齢は7歳以上から可能で、眼の形状や涙の状態を調べて適応を判断します。
初期費用はかかりますが、毎晩の装用と定期的なチェックで、視力維持と近視進行の二重の効果が期待できます。
こどもの視力を守るのは家族の力です
お子さんの目は、まだまだ発育途上です。視力の変化に気づきにくく、症状を訴えないこともあります。
こどもの日は、「未来を見つめる目」を守るという意味でも、ご家庭で視力チェックや生活習慣を見直す良い機会です。
- テレビやスマホの距離は30cm以上
- 30分に1回は目を休める
- 寝る前のスマホ使用は控える
- 外で思い切り遊ぶ時間をつくる
このような小さな積み重ねが、大きな視力低下を防ぐことにつながります。
まとめ:近視は“進行させない工夫”が大切です
近視の子どもが増えている今、ただの視力低下と軽く見ずに、早期発見・早期対策を心がけましょう。
当院では、ご家族とともに、こどもたちの目を守るサポートをしていきたいと考えています。ご不安な点や気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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