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[No.3964] 高円寺の路傍に咲く花 ― ポーチュラカ(ハナスベリヒユ)と眼の健康の小話

高円寺の路傍に咲く花 ― ポーチュラカと眼の健康の小話

夏を彩る強い花「ポーチュラカ」

本日、高円寺を歩いていたときに、路傍の鉢に鮮やかなピンク色の花が咲いているのを見かけました。その花の名は「ポーチュラカ(Portulaca oleracea var. grandiflora)」です。日本では「ハナスベリヒユ」とも呼ばれ、夏から秋にかけて街角や家庭の鉢植えでよく見かけます。

ポーチュラカは多肉質の葉と茎を持ち、乾燥や強い日差しにも負けない丈夫な花です。特に、夏の暑さが厳しい都市部でも元気に咲き続けることから、ガーデニング愛好家に人気があります。花の色はピンク、赤、オレンジ、黄色、白など実に多彩で、太陽が出ているときに花が開き、曇りや夕方には閉じるというユニークな性質を持っています。このため「サンキャッチャー」という愛称でも親しまれています。

ポーチュラカの仲間と薬草としての歴史

実は、このポーチュラカは観賞用に改良された品種で、もともとの仲間に「スベリヒユ(Portulaca oleracea)」という野草があります。スベリヒユは古くから薬草として利用されてきた植物で、世界中の民間療法で「炎症を抑える」「体を潤す」といった効能が語られてきました。中国医学では「五臓を潤す」と表現され、体内の熱を冷ます役割があるとされます。

このスベリヒユには、抗酸化作用のあるビタミンA・C・Eやカロテノイド、さらにはオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。これらの栄養素は、体の健康のみならず眼の健康とも深く関係しています。

抗酸化成分と眼の健康

白内障や加齢黄斑変性(AMD)といった眼疾患は、体内で発生する「活性酸素」による酸化ストレスが一因とされています。抗酸化作用のある栄養素は、この酸化ストレスを抑えて眼を守る働きを持つと考えられています。

スベリヒユに含まれるビタミンやカロテノイドは、まさにこの酸化ストレスを軽減する自然のサポーターです。例えば、ルテインやゼアキサンチンといったカロテノイドは黄斑部に多く存在し、紫外線などによるダメージから網膜を守ってくれます。

オメガ3と網膜の健康

さらに注目すべきは、スベリヒユが持つオメガ3脂肪酸(特にα-リノレン酸)です。オメガ3は魚やナッツ類にも含まれていますが、網膜や脳の働きに欠かせない栄養素です。特にドライアイや加齢性黄斑変性といった病気では、オメガ3を含む食事が症状の予防や改善に役立つ可能性があると報告されています。

もちろん、花壇のポーチュラカをそのまま食べるわけではありませんが、身近な花の仲間が私たちの体や目の健康に関わる成分を持っているというのは、ちょっとした豆知識として楽しいものです。

街角の花から広がる健康の話題

高円寺の路傍に咲いていたポーチュラカは、単に彩りを添えるだけでなく、植物が持つ潜在的な力を思い出させてくれました。普段目にする花や雑草の中にも、古くから人々の生活や健康に寄り添ってきたものがあるのです。眼科医として日々診療をしていると、栄養や生活習慣と目の健康のつながりを強く感じます。今回のポーチュラカも、そんな結びつきを考えるきっかけになりました。


出典

  • 日本植物学会監修『日本の野草』平凡社

  • JAMA Ophthalmology, Age-Related Macular Degeneration and Antioxidants

  • World Journal of Nutrition: Health Benefits of Portulaca oleracea


院長清澤のコメント

高円寺の路傍で咲く花を眺めながら、眼の健康と自然との関わりを考えるのは楽しい時間です。ポーチュラカ自体を薬草として使うわけではありませんが、その仲間のスベリヒユが持つ抗酸化作用やオメガ3の効能は、現代の眼科診療とも無関係ではありません。身近な花から「眼と健康のつながり」を学べるのも、自然観察の面白さだと思いました。

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