清澤のコメント:強いドライアイを訴える患者さんの中にシェーグレン症候群が隠れていることがしばしばあります。シェーグレン症候群とその眼症状の復習をするために難病情報センターの記事から要点を抄出してみます。
- シェーグレン症候群とは
本疾患は主として中年女性に好発する涙腺と唾液腺を標的とする 臓器特異的 自己免疫疾患ですが、全身性の臓器病変を伴う全身性の自己免疫疾患でもあります。シェーグレン症候群は膠原病(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎、混合性結合組織病) に合併する二次性シェーグレン症候群と、これらの合併のない 原発性 シェーグレン症候群に分類されます。 原発性シェーグレン症候群の病変は3つに分けることができます。1つ目は目の乾燥(ドライアイ)、口腔乾燥の症状のみがある患者さんで、ほとんど健康にに暮らしている患者さんもいますが、ひどい乾燥症状に悩まされている人もいます(約45%)。2つ目は全身性の何らかの臓器病変を伴うグループで、諸臓器へのリンパ球浸潤 、増殖による病変や自己抗体 、高γグロブリン血症などによる病変を伴う患者さんです(約50%)。3つ目は悪性リンパ腫や原発性マクログロブリン血症を発症した状態です(約 5%)。経過を見ますと、約半数の患者さんは10年以上経っても何の変化もありませんが、半数の患者さんは10年以上経つと何らかの検査値異常や新しい病変がみられます。
- この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
2011年の厚生労働省研究班のデータでは、1年間に病院などを受療した患者さんは約68,000人とされました。しかし、潜在的な患者さんを含めると、この数よりも多いことが推測され、アメリカのデータを当てはめると10~30万人と推定されることもあります。
- この病気はどのような人に多いのですか
この疾患の年齢層は50歳代にピークがあります。男女比は男1人:女17人で、女性に多く発症します。関節リウマチの患者さんの約20%にシェーグレン症候群が発症します。
- この病気の原因はわかっているのですか
自己免疫による疾患で、自分の身体の成分に対して免疫反応を起こすことによる疾患です。
- この病気ではどのような症状がおきますか
以下のようなものがあります。
1)目の乾燥(ドライアイ)
・涙が出ない ・目がごろごろする ・目がかゆい ・目が痛い ・目が疲れる ・物がよくみえない ・まぶしい ・目やにがたまる ・悲しい時でも涙が出ないなど。
2).口の乾燥(ドライマウス)
3.鼻腔の乾燥
- その他
・ 唾液腺の腫れと痛み ・ 息切れ ・ 熱が出る ・ 関節痛 ・ 毛が抜ける ・ 肌荒れ
・ 全身症状として 疲労感 ・ 記憶力低下 ・ 頭痛は特に多い症状で、 めまい ・ 集中力の低下 ・ 気分が移りやすい ・ うつ傾向などもよくあります。
6. この病気はどのようにして診断されるのですか
1999年に厚生省の診断基準が改定され、
(1)口唇小唾液腺または涙腺の 生検組織 でリンパ球 浸潤 がある
(2)唾液分泌量の低下がガムテスト、サクソンテストで証明され、シンチグラフィーで異常がある、または唾液腺造影で異常がある
(3)涙の分泌低下がシャーマーテストで証明され、ローズベンガル試験または蛍光色素試験で角結膜の上皮障害がある
(4)抗SS‐A抗体か抗SS‐B抗体が陽性である
この4項目の中で2項目以上が陽性であればシェーグレン症候群と診断されます。
7. この病気ではどのような治療があるのですか
治療は乾燥症状を軽快させることと疾患の活動性を抑えて進展を防ぐことにあります。目の乾燥、口の乾燥はひどくなると著しく生活の質(QOL)を障害しますので、毎日の点眼、口腔清潔を心がける必要があります。エアコン、飛行機の中、風の強い所、タバコの煙などに注意が要ります。
1).眼乾燥(ドライアイ)に対する治療
治療法は(1)涙の分泌を促進する、(2)涙の補充、(3)涙の蒸発を防ぐ、(4)涙の排出を低下させる方法がとられます。
(1)涙の分泌を促進する方法として、ステロイド薬による抗 炎症 作用や 炎症 細胞の 浸潤 抑制による効果は証明されていません。
(2)涙の補充には人工涙液や種々の点眼薬があります。これらを1日3回以上使用します。点眼薬には防腐剤が入っていますので、何回も点眼するときは防腐剤による角膜障害が問題になります。傷害された角膜上皮の再生促進や角膜炎の治療の目的で、ヒアルロン酸、コンドロイチン、 ビタミンA、フィブロネクチンなどを含んだ点眼薬が使用されます。
(3)涙の蒸発を防ぐために、眼鏡の枠にビニール製のカバーをつけたモイスチャー・エイド(ドライアイ眼鏡)があります。
(4)涙の排出を低下させるためには、鼻側の上下にある涙の排出口である涙点を閉じる方法があります。それには涙点プラグで詰める方法や、手術によって涙点を閉鎖する方法があります。これらはいずれも患者さんに大変評判のよいものです。眼科医に相談して下さい。
2).口腔乾燥に対する治療
(1)唾液の分泌促進、(2)唾液の補充、(3)虫歯の予防や口内の真菌感染予防、(4)口腔内環境を改善することなどです。
3).全身病変(涙腺、唾液腺以外の臓器障害)に対する治療療
重要な臓器(肺、腎臓、筋肉、神経、血管など)の活動性病変(病気の勢いがある、あるいは進行を認める)を伴う場合には、中等量以上のステロイド、免疫抑制薬を使用します。関節痛・関節炎に対しては、痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)を用い、効果不十分あるいは関節炎が高度の場合には少量のステロイドを考慮します。皮疹に対しては、ステロイド外用を用い、重度の場合にはステロイドの内服を考慮します。
4).病気の正しい理解と心構え
- 病気の理解(医師、本、患者会で学ぶ)
- 心構え
(1)病気と共存するほか
- 日常生活で気をつけること
- 規則正しい生活
- 安静と十分な睡眠:過労をさける、昼寝をする
- 好き嫌いせずにバランスの取れた食事:栄養素、カルシウム(食後の歯の手入れ)
- 寒冷をさける:ウイルス感染に注意
- 外傷、手術などの肉体的ストレスをさける
- 精神的ストレスをさける
コメント