眼科学がdigitizationを最も巧みに取り入れ,発展させていく医学分野であることを示したい.
I.不正乱視デジタル解析
眼の屈折のうち,球面成分と円柱成分は数値化できるが,不正乱視は数値化できないことを,研修医ながら疑問に思った。角膜形状解析データをFourier解析することにより,角膜の球面成分,正乱視成分,不正乱視成分といった臨床的に分かりやすい指標を数値化する方法を開発し,臨床応用に結びつけた.ーーー眼球全体の光学的不整性を定量化する波面センサーを共同開発し、眼球全体の高次収差が持つ意義および視機能に与える影響に関する研究を進めた。
II.前眼部3次元光バイオプシー
従来のOCTでは限られた範囲の2次元的観察ができるのみであった.筑波大学数理物質科学研究科と共同で,世界初の前眼部3次元OCT(AS-OCT)を開発した.非侵襲で眼内部の構造を立体的に可視化した。
さらに偏光感受型OCTの開発を進め,コラーゲン線維の変化などの組織内部特性を反映した質的情報をin vivoで得る方法を確立した。
III.眼科における人工知能(AI)
画像を含む大量のデジタル情報を日々扱う眼科学は,ビッグデータ・AIとの親和性が高い。日本眼科AI学会および一般社団法人Japan Ocular Imaging Registryの2団体を立ち上げ,国立情報学研究所(NII)および日本眼科医療機器協会と密に連携し,ビッグデータ・AIに関する研究と実用化を進めている。
IV.画像のデジタル鮮明化
純粋に算術的手法によって元々あるべき画像へと鮮明化する。本法を眼科画像に応用することにより,静止画および動画の質を向上させる。画像入力装置とモニターの間に画像鮮明化装置を設置し,リアルタイムで動画の鮮明化を行える。眼底写真などの静止画も,鮮明化処理は有効。Digital Ophthalmologyは全力で取り組むべき課題であり,また否応なしに訪れる眼科の未来でもある.(日眼会誌127:257-296,2023)
ーーーーー
コメント