片眼で難治性の連続する数本のマイボーム腺炎があり、現在連日の温罨法を指導していますが、消退しません。その原因で考えられることと対応策を述べてみましょう。
片眼に難治性で連続した数本のマイボーム腺炎(睫毛腺炎または麦粒腫が見られる場合、以下のような原因が考えられます。また、対応策についても記載します。
原因
- 局所感染の持続
- 黄色ブドウ球菌や他の細菌の感染が慢性的に続いている可能性。
- 感染がマイボーム腺管内に局在し、膿瘍形成が繰り返されている。細菌培養も再度見る。
- 眼瞼の慢性炎症
- 慢性睫毛炎や眼瞼縁炎が背景にある場合、マイボーム腺炎の再発を引き起こすことがあります。
- 全身的要因
- 糖尿病や免疫低下など、治癒を遅らせる全身的な疾患。一般採血をして糖尿病なども除外する。
- 脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎が関連している場合も考えられます。
- 脂質異常やマイボーム腺機能不全(MGD)
- 分泌物が増粘し、腺の閉塞が進んで炎症を助長している。
- 腫瘍性変化の可能性
- 特に高齢者では、マイボーム腺癌や基底細胞癌など悪性疾患を鑑別する必要があります。これ以上遷延するならば、この可能性も検討を要す。
- 症状が頑固で、他の治療に反応しない場合には眼瞼腫瘍を扱える病院での生検も検討します。
対応策
- 温罨法の強化
- 現在温罨法を実施されているとのことですが、以下のように調整してください:
- 温度:40~45℃程度
- 時間:1回10~15分、1日2~3回
- 適切な方法:ホットアイマスク、または専用の蒸気式温罨法デバイスの推奨も検討できる。
- 抗菌薬の点眼・内服
- 抗菌点眼薬(フルオロキノロン系やトブラマイシン点眼など)を併用する。
- 反応が乏しい場合、抗菌内服薬(セファレキシンやクラリスロマイシンなど)を短期間使用する。
- 感染が深部に及んでいる可能性があるため、内服を検討。
- ステロイド抗炎症点眼薬の併用
- 炎症が強い場合、短期間のステロイド点眼薬(フルメトロンかリンデロン点眼液)を併用すると腫脹が軽減されることがあります。
- 必要であれば抗菌ステロイド合剤も考慮します。
- マイボーム腺マッサージ
- 温罨法後に腺内容物を除去するため、適切な圧力で眼瞼をマッサージ。
- 必要であればクリニックでマイボーム腺の圧出を行います。
- ドライアイ・MGD(マイボーム腺機能不全)の治療
- 背景にマイボーム腺機能不全がある場合、脂質層を改善する治療を追加:
- リピッドフロウ(LipiFlow)やIPL治療。
- 涙点プラグで涙液蒸発を減らす。
- 全身疾患の確認
- 糖尿病や免疫異常が疑われる場合、血糖値や免疫機能のスクリーニング検査を行う。
- 悪性疾患の除外
- 症状が頑固で、1か月以上改善が見られない場合、医院では難しいので眼瞼腫瘍も扱う大病院での生検を行い腫瘍性病変を除外する必要性も場合によっては考えます。。
- 生活習慣指導
- まつ毛ダニ(Demodex)の存在が炎症を助長している可能性があるため、眼瞼清拭を徹底:専用の洗浄剤(例:アイシャンプーやティーツリークレンジング)でまつ毛根元を清拭。
- コンタクトレンズの不適切な使用を中止。
次のステップ
症例が難治性の場合、以下の治療を組み合わせて段階的に進めていきます:
- 温罨法+抗菌薬治療(点眼・内服)を2週間。
- 効果不十分ならステロイド点眼薬やマイボーム腺圧出を追加。
- 数週間経過しても改善しない場合は生検。
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