結膜炎・花粉症・ものもらい (結膜疾患)

[No.1198] 翼状片手術:平野耕治先生の印象メモ

清澤のコメント:翼状片も巷のクリニックでしばしば出会う角膜疾患であり、私の様に自分の診療所で切除手術を行わないならば、それを得意とする医師への紹介を要するものです。今月号の日本の眼科には、平野耕治先生がその処置についてまとめて居られます。私は、聴講記的にその記事を、患者さんにその切除手術の概要を理解していただくのに参考になる程度に抄出してみます。彼の記述で印象的なのは:翼状片手術でも「敵を知り己 を知る」ことが重要であり,自身の手に負える翼状片かどうかの判断ができることが名人への第一歩である。経験を糧にするためには少なくとも 1 年間は術後の経過をみる必要がある。:というところでした。

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翼状片手術  平野耕治氏(トヨタ記念病院眼科)の記事を参考にまとめる

要約:翼状片手術における最大の課題は再発である。 再発を抑えるために,翼状片の単純切除だけでなく,有茎結膜弁,遊離結膜弁などによる結膜再建,羊膜移植の併用,術中マイトマイシンC処置など様々な方法が講じられている。平野医師は術者として大切なのは,自身の経験からこれが手に負える翼状片かどうかの判断ができることであるという。

   ―――記事の要点――――

翼状片手術にはさまざまな術式があるが,その目指すところはいかに再発を防ぐことができるかである。 平野医師の翼状片手術における再発防止処置と術後合併症について概述する。

 Ⅰ.翼状片の 3 つのパートと手術の適応  翼状片は3 つのパートから成り立っている。頂点付近の灰白色の上皮下組織が 先端部(capで,角膜上の翼状片が頭部(head),強膜上のものが体部(bodyである。手術の適応としては,1)整容面,2)異物感, 3)視力ないし QOV(視機能の質)の障害をきたしている場合の 3 つが挙げられる。

 Ⅱ.再発防止の工夫  翼状片の切除後に起こりうる再発を予防するための方法はいくつかある。

 Ⅲmodified mini-flap  難症例の手術目的でご紹介される患者が多く,単純な翼状片切除では再発は必発である。そのため,切除範囲を変え,結膜再建においても,遊離結膜弁,有茎結膜弁,羊膜移植の併用を試み,また,表層角膜移植や角膜輪部移植の併用も行ってきた。“mini-flap を採択してみたら再発率が格段 に下がった。

 

1 翼状片の再発予防の工夫は

1.切除範囲

2.切除した後の再建方法  ・1 次縫合  ・有茎結膜弁  ・遊離結膜弁  ・羊膜移植  ・角膜移植(輪部移植,角膜上皮形成術を含む)

3.創閉鎖の工夫  

4.その他のオプション(未承認)略 以下の具体的手術手法もここでは短縮する。

 

図3(略):

a) 結膜下に浸潤麻酔を施した後,翼状片頭部でも先端に近い部位で切開を入れる。

b) 鈍的に結膜とその下の組織の剥離を行う。

c) 翼状片頭部で結膜を切断する。

d) わたぬき(結膜下増殖組織の切除)を行う。

e) 角膜上に残った翼状片組織を剥離して除去する。

f) 希釈したマイトマイシ ン CMMC)を染み込ませたセルロース・スポンジ(M.Q.A.)片を切除断端の結膜下 に置いて 4 分間待つ。

g M.Q.A. 片を除去した後,生理食塩水約300 ml で洗浄を行ってから結 膜の縫合を行う

 

modified mini-flap 法の特徴と手術成績  

本法の特徴として以下の 5 点が挙げられる。切除範囲が先端部と頭部の一部のみで,正常な結膜組 織をできるだけ温存している,結膜下の増殖組織 の除去,術中に MMC 処置を行っている,焼灼による止血は行わない,強膜には通糸せず寄せる程度に結膜を縫合していること,である。

 調査の対象は 2012 年から 2016 年までの 5 年間に 同院で本法での翼状片手術を施行した 128 眼のうち 3か月以上術後経過を追跡できた例で,101 症例 115 眼が該当していた。術後の成績であるが角膜輪部を超えて血管を伴った結膜組織の侵入を見たものを再発と定義して検討したところ、確認しえた限りでは 95.7% は再発がない。

 

.翼状片の理想的な術式を語るには 限界がある

肉厚タイプ,先の翼状片手術後 2 ヶ月でまだ炎症が強く残っていること,若年者の再発翼状片でこの時期に行えば再発は免れず,若いだけに長期間に亘る術後経過での安全性が保証されていない段階での MMCの使用ができないからである。このような再発のリスクが高 かったり,術後に眼球運動障害や角膜穿孔などの合 併症を起こしかねない症例については当初から手術 の適応とはしていない。 術者は術後最低 1 年間は責任 をもって経過をみて適応判断の基準を確立してゆく 必要がある。

.再発以外の術後合併症  長い間翼状片手術を執刀してきた経験から,術後 の合併症についてもご相談をいただいてきた。

 

翼状片手術でも「敵を知り己 を知る」ことが重要であり,自身の手に負える翼状 片かどうかの判断ができることが名人への第一歩で ある。それで「百戦殆うからず」とは言わないが, 経験を糧にするためには少なくとも 1 年間は術後の 経過をみる必要がある。なお,本文中ではほとんど 触れていないが,再発翼状片の患者を診る場合には 前の執刀医に配慮した対応も必要である。  

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