強度近視における緑内障(近視性緑内障)とは
強度近視における緑内障、または緑内障視野欠損の特徴と治療方針について説明します。
特徴
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視野欠損のパターン:
- 強度近視では、視野欠損が中心部や鼻側に生じやすく、一般的な緑内障とは異なるパターンを示すことがあります。
- 視野欠損が進行しやすい原因の一つとして、視神経乳頭が長軸方向に伸びている(傾斜乳頭を示しやすい)ことが挙げられ、これにより緑内障性の変化が視野全体に広がりやすくなります。
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視神経乳頭の異常:
- 強度近視の患者では、視神経乳頭の形態が変形しているため、緑内障の診断が難しくなることがあります。特に、乳頭の傾斜や萎縮領域が広がり、緑内障性変化と区別がつきにくくなります。(これらは別個の問題というよりも、連続したスペクトラムとして捉えるべきかもしれません。)
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眼圧の影響:
- 強度近視では、眼圧が正常範囲内であっても緑内障が進行することがあり、正常眼圧緑内障として現れることが多いです。
治療方針
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眼圧管理:
- 眼圧を低く維持することが重要です。眼圧降下薬の使用が一般的ですが、強度近視ではより積極的な眼圧低下が推奨されることがあります。
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定期的な視野検査とOCT:
- 早期発見と進行の監視のために、定期的な視野検査やOCT(光干渉断層計)による網膜神経線維層の評価が重要です。強度近視では視野検査だけでなく、OCTによる神経線維層の観察が診断の補助となります。
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外科的治療:
- 眼圧降下薬による治療が効果的でない場合、または視野欠損が進行する場合、レーザー治療や手術(線維柱帯切開術、線維柱帯切除術、濾過手術など)が考慮されます。
参考文献
- Spaide RF. (2014). “Myopia and glaucoma”. The British Journal of Ophthalmology, 98(12), 1573-1577.
- Kurtz S, et al. (2007). “Myopia and glaucoma: Diagnostic and therapeutic challenges”. Canadian Journal of Ophthalmology, 42(4), 507-512.
- Foster PJ, et al. (2002). “Myopia, axial length, and open-angle glaucoma: the Beijing Eye Study”. Ophthalmology, 109(4), 747-753.
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それでは、強度近視性緑内障により適した緑内障点眼薬には何がありますか?
強度近視性緑内障において、適切な緑内障点眼薬の選択は、個々の患者の病態や薬物反応に基づいて慎重に行う必要があります。一般的に使用される点眼薬のクラスには以下のようなものがありますが、強度近視に特有の注意点も考慮する必要があります。
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プロスタグランジンアナログ(PGA)
- 代表薬: ラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロスト
- 効果: 眼圧下降効果が高く、1日1回の投与で済むためコンプライアンスが良好です。強度近視の場合でも効果が期待できますが、まれに虹彩色素沈着や眼瞼周囲の色素沈着が起こることがあります。
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β遮断薬
- 代表薬: チモロール、カルテオロール
- 効果: 眼圧を下げる効果があり、心血管系のリスクが少ない患者に適しています。しかし、強度近視患者では局所適用による全身性副作用(例えば、呼吸困難や低血圧)に注意が必要です。
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炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)
- 代表薬: ドルゾラミド、ブリンゾラミド
- 効果: 眼圧を下げる効果があります。PGAやβ遮断薬と併用することが一般的ですが、角膜への影響に注意が必要です。
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α2作動薬
- 代表薬: ブリモニジン
- 効果: 眼圧下降効果があり、神経保護効果があるとされています。ただし、強度近視では、夜間の低血圧を避けるために慎重な使用が必要です。
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ロキソプロフェン(Rhoキナーゼ阻害薬)
- 代表薬: リパスジル
- 効果: 最近の治療選択肢であり、眼圧下降効果と線維柱帯を通る房水流出の改善効果が期待されます。
強度近視における考慮点
強度近視患者では、脈絡膜や網膜に既存の変性があるため、特に虹彩や網膜への副作用に注意を払い、定期的な眼底検査とOCTモニタリングが推奨されます。また、点眼薬の選択は患者のライフスタイル、全身的な健康状態、および他の眼疾患の存在を考慮して行うべきです。
併用療法
強度近視性緑内障では、単剤では眼圧が十分に下がらないことが多いため、複数の点眼薬の併用療法が一般的です。しかし、薬物相互作用や全身性の副作用のリスクを低減するために、点眼薬の組み合わせを慎重に検討する必要があります。
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