緑内障

[No.4519] 狭隅角眼とレーザーイリドトミー ― 手術をお勧めする理由とその目安

狭隅角眼とレーザーイリドトミー ― 手術をお勧めする理由とその目安

眼の中では「房水(ぼうすい)」という水が常に循環しており、その出口にあたるのが「隅角(ぐうかく)」です。この隅角が生まれつき狭い状態を狭隅角眼といいます。隅角が狭いと、何らかのきっかけで房水の流れが急に滞り、眼圧が一気に上昇することがあります。これが急性閉塞隅角緑内障発作です。発作が起こると、強い眼痛、頭痛、吐き気、かすみ目などを伴い、短時間で視神経に回復しにくい障害を残すことがあります。

このような事態を予防するために行う処置がレーザーイリドトミーです。虹彩(茶目の部分)に小さな穴をあけ、房水の流れ道をもう一つ作ることで、隅角が急に閉じることを防ぎます。外来で行える処置で、通常は点眼麻酔のみ、数分程度で終了します。

では、どのような場合にこの処置をお勧めするのでしょうか。

まず、隅角鏡検査などで隅角がほとんど見えない、あるいは極めて狭いと確認された場合は重要な判断材料になります。加えて、前房が浅い、遠視が強い、50歳以上、女性であるといった因子も閉塞隅角の危険性を高めます。

さらに、すでに隅角の一部が閉じ始めている場合や、眼圧がやや高めの場合には、将来の急性発作を防ぐ目的で積極的に勧められます。片眼に急性発作を起こした既往がある方では、もう一方の眼も高率に発作を起こすため、予防的レーザーが一般的に行われます。

ここで重要なのは、他科治療との関係です。内科や精神科、泌尿器科などで使用される一部の薬剤には、瞳孔を広げる(散瞳させる)作用を持つものがあります。抗コリン作用を有する薬や一部の向精神薬、抗ヒスタミン薬などが代表例です。瞳孔が広がると虹彩が厚みを増して隅角がさらに狭くなり、急性閉塞隅角発作を誘発する危険があります。そのため、これらの散瞳作用をもつ薬剤を継続的に使用する必要がある場合には、あらかじめレーザーイリドトミーを行っておくことが医学的に正当化される場合があります。つまり、将来予測されるリスクを下げるための予防的処置として位置づけられるのです。

一方で、隅角は狭いものの、閉塞の兆候もなく、眼圧も正常で、慎重な経過観察が可能なケースもあります。また、白内障が進行している場合には、水晶体を取り除く白内障手術によって隅角が広がるため、レーザーではなく手術を優先する判断をすることもあります。

レーザーイリドトミーは比較的安全な処置ですが、一時的な眼圧上昇、炎症、まれに光のにじみなどが生じることがあります。そのため、利点とリスクを十分に説明し、ご理解いただいた上で行います。

この治療は「今困っている症状を取るため」ではなく、「将来起こりうる重大な発作を未然に防ぐため」の予防的医療です。隅角の状態、眼圧、年齢、生活背景、他科治療の内容などを総合的に判断し、その方にとって利益が上回ると考えられる場合にお勧めしています。不安な点があれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。(レーザー光源は細隙灯顕微鏡に組み込まれていますのでこの図のような配置にはなりません。)

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