高眼圧を伴う人工水晶体の亜脱臼
Q:
10年前に他院で行われた白内障手術で挿入されたシリコーン製眼内レンズが下方へずれています。散瞳すると、上方の支持部(ループ)が瞳孔後方に見え、レンズの縁もほぼ瞳孔中心に認められます。空気眼圧計では測定不能(スケールアウト)であり、触診では眼圧は50mmHg以上と推定されます。矯正視力は0.8と保たれています。なお、反対眼でも過去にレンズ脱臼が起こり、再固定術を受けています。
人工水晶体の脱臼が高眼圧の原因と考えられ、レンズの摘出および毛様体溝への縫合固定などが必要と思われますが、この高眼圧は硝子体の隅角への陥頓と考えてよいのでしょうか。また、原因と対応はどの順で行うのがよいか、患者さん向けに説明してください。
A:
今回の左眼の状態についてご説明いたします。10年前の白内障手術で挿入された人工のレンズ(人工水晶体)が、現在は本来の位置から下の方へずれてしまっています。そのため、瞳を広げた状態では、レンズの支えの部分やレンズの縁が瞳の中心付近に見える状態になっています。
このようにレンズの位置がずれると、眼の中の水(房水)の流れが妨げられ、眼圧が上昇することがあります。今回のように眼圧が50mmHg以上と非常に高い状態は、視神経に強い負担をかけ、放置すると緑内障として視野が狭くなる危険があります。そのため、早急な対応が必要です。
では、なぜ眼圧がここまで上がったのかですが、主に二つの仕組みが考えられます。一つは、ずれたレンズが虹彩(茶目)の裏側に当たり、水の通り道をせき止めてしまう「瞳孔ブロック」という状態です。もう一つは、本来は眼の奥にあるゼリー状の組織(硝子体)が前方へ出てきて、水の出口である隅角に入り込み、排水を妨げてしまう状態です。
今回のようにレンズが大きくずれている場合には、硝子体が前に出てきている可能性もあり、眼圧上昇の一因となっていると考えられます。ただし、原因は硝子体だけに限られるわけではなく、レンズのずれによる房水の流れの障害が同時に関与していることが多く、複数の要因が重なっていると考えるのが適切です。
治療の進め方としては、まず第一に高い眼圧を安全な範囲まで下げることが最も重要です。点眼薬や内服薬、必要に応じて点滴などを用いて速やかに眼圧を下げます。眼圧が高いままでは視神経への障害が進むだけでなく、安全に手術を行うことも難しくなります。
次に、原因となっている人工レンズの位置異常を治療します。具体的には、ずれてしまったレンズを一度取り除き、適切な位置に固定し直す手術が必要になります。方法としては、毛様体溝に糸で固定する方法などが一般的です。
さらに、硝子体が前に出て排水口をふさいでいる場合には、その部分を切除する処置(前部硝子体切除)を同時に行うことがあります。これにより房水の流れが改善し、眼圧の安定が期待できます。
また、反対の眼でも同様のトラブルが起きていることから、レンズを支える組織が弱い体質の可能性も考えられます。そのため、再手術では再びずれが起きないよう、より安定した固定方法を選択することが重要になります。
まとめますと、今回の高眼圧は人工レンズの脱臼によって眼内の水の流れが障害されたことが原因であり、その中には硝子体の関与も含まれている可能性があります。治療は、①まず眼圧を下げる、②原因となるレンズを手術で適切に処置する、③必要に応じて硝子体の処置を行う、という順序で進めていきます。
視力がまだ保たれている今の段階で適切に対応することで、将来の視機能を守ることが期待できますので、できるだけ早めの治療が大切です。



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