緑内障

[No.1174] 質の悪い睡眠で緑内障リスク上昇

清澤のコメント:質の悪い睡眠で緑内障リスク上昇という結論は容易に同感できるものですが、その効果はハザード比で4%から20%とそう大きくもない効果のようです。

2022年11月07日 05:00

イメージ画像© Adobe Stock ※画像はイメージです

 いびき、日中の眠気がある、睡眠時間が短過ぎるあるいは長過ぎると、緑内障リスクが上昇することが分かった。中国・Beijing Huimin HospitalのCun Sun氏らは、UK Biobankのデータを基に睡眠行動、睡眠パターンと緑内障との関係を検討した結果をBMJ Open2022; 12: e063676)に報告した。

41万人を10年超追跡

 緑内障は失明の主要な原因で、2040年までに世界で1億1,200万人が罹患すると推定されている。緑内障の発生機序や進展に関与する因子は明確でない。緑内障の集団検診は安いものの効果が小さく、高リスク者を対象としたスクリーニングは一定の効果があると考えられる。眼圧の上昇は緑内障の主要な危険因子で、眼圧低下が緑内障の唯一証明された治療である。眼圧には日内変動があり、睡眠時の頭部と身体の位置により夜間にピークを示す。また、これまでの研究で睡眠障害が緑内障の重要な危険因子である可能性が示唆されている。

 そこでSun氏らは、睡眠パターンが緑内障の発症と進展に寄与している可能性があると考え、UK Biobankのデータを基に睡眠行動と緑内障の関係を検討した。

 対象は2006~10年にUK Biobankに登録された40~69歳の40万9,053人。

 不眠症、短過ぎる/長過ぎる睡眠時間、朝型/夜型人間、日中の眠気、いびきと緑内障との関係を検討した。正常な睡眠時間は7~9時間とし、寝過ぎを9時間超、睡眠不足を7時間未満とした。朝型/夜型人間かは本人の申告に従った。

 夜間の入眠困難または頻回覚醒などの不眠症の重症度は、全くない/時々/いつもの3段階に分類日中の眠気は、全くない/まれにある/時々ある/よくあるの4段階に分類した。

 登録時に質問票を用いて年齢、性、人種/民族、学歴、喫煙状況、飲酒の有無、運動の有無などのデータを収集。診療録および死亡届を用いて登録者の健康状態と生死を最初の緑内障の診断、死亡、移民、2021年3月31日のいずれか早い時点まで追跡し、睡眠行動、睡眠パターンと緑内障との関係を検討した。

頻繁な日中の眠気でリスクが20%上昇

 平均10.7年の追跡期間中に、8,690例が緑内障を発症した。

 緑内障患者は非緑内障者よりも年齢が高く(62.2歳 vs. 56.9歳)、男性(47.4% vs. 44.9%)、喫煙者(48.6% vs. 45.3%)、高血圧(12.9% vs. 7.6%)、糖尿病(4.4% vs. 2.0%)が多かった。

 Cox比例ハザードモデルで共変量を調整後、朝型/夜型以外の短過ぎるまたは長過ぎる睡眠時間ハザード比(HR)1.08、95%CI 1.03 ~1.13〕、いつも不眠症(同1.12、1.07 ~1.17)、いびき(同1.04、1.00 ~1.09)、頻繁な日中の眠気(同1.20、1.07~1.34))は緑内障リスクをそれぞれ8%、12%、4%、20%有意に上昇させた。また、いびきと日中の眠気の併存は緑内障リスクを10%(同1.10、1.02~1.18)、不眠症と短過ぎる/長過ぎる睡眠時間の併存は13%上昇させた(同1.13、1.06 ~1.20)。

 緑内障の発症に重要な要素である眼圧は、臥位時または不眠症のように睡眠ホルモンの分泌が低下しているときに上昇する。

 しばしば不眠症と密接に関連するうつ病および不安は、おそらくコルチゾル産生の調節不全を介して、眼圧を上昇させる可能性がある。

 また、睡眠時無呼吸によって引き起こされる細胞性酸素低値の反復または長期のエピソードは、視神経に直接的な損傷を引き起こす可能性があることが示唆されている。

 以上を踏まえ、Sun氏らは「睡眠行動は変更可能であるため、今回の知見は緑内障リスクが高い者に対する睡眠介入の必要性と、慢性睡眠障害のある者における緑内障予防としての眼科スクリーニングの必要性を強調している」と結論している。

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