神経眼科

[No.230] 正月明けは要注意!「眼精疲労」には目の病気が隠れている:日刊ゲンダイ自著記事紹介

清澤のコメント:明けましておめでとうございます。「眼精疲労」の解説で恐縮です。新聞記者という職業には盆暮れもないのですね。正月休暇の間に日刊ゲンダイ記者氏と原稿のやり取りをしてまとめて戴いたのがこの記事です。この項目では眼科全般の解説をさせていただいておりますが、私の専門は視覚受容と眼球運動を扱う「神経眼科」全般です。最近でも、眼科全体の診断と治療を眼科医向けに「眼精疲労」を解説するページを担当しました。以下に今日ネット公開された日刊ゲンダイ記事を採録します。 

  • 公開日:20220107日 (日刊ゲンダイ1月7日号記事引用)

目を休めるだけでは解消しないのが「眼精疲労」

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の登場で旅行や帰省を控え、正月休みはテレビやユーチューブで連ドラの一気見やゲーム三昧という人も多かったのではないか。中には仕事を持ち帰り、休み中にこなした人もいるだろう。そのせいか、会社が始まったばかりだというのに目の疲れによる目の痛み、かすみ目、肩こり、頭痛といった症状に悩んでいる人もいる。どうしたらいいのか? 「自由が丘清澤眼科」(東京・目黒区)の清澤源弘院長に話を聞いた。

◇  ◇  ◇

目の疲れには休めば容易に症状が解消する「眼疲労」と休むだけでは解消しない「眼精疲労」に分かれる。後者は眼痛や重圧感、頭重感、視力低下、あるいは複視(物が二重に見えること)などの症状があり、デスク作業の継続に支障を来す状態を指す。

「正月休みのテレビの見過ぎ、ゲームのやり過ぎだけで眼精疲労になるわけではありません。眼精疲労になる人の多くは、目の病気が隠れているので注意が必要です」

事実、眼精疲労にはピントを調節する毛様体筋に過度の疲労が重なって生じる「調節性眼精疲労」のように、背後に近視や遠視、老視、仮性近視などがあって、それが症状に拍車を掛けているケースも少なくない。近くのものを見るのに外斜視などで寄り目がうまくできないことによる「筋性眼精疲労」、左右の視力差が大きくそれを無理にメガネで矯正することで起こる「不等像性眼精疲労」が潜んでいる可能性もある。

ほかにも角膜混濁、白内障、緑内障、網膜疾患などにより、何とかピントの力で見にくさを克服しようとして毛様体が疲弊する「症候性眼精疲労」、神経性のストレス、不安神経症、うつなどが原因となり、自律神経の働きが崩れることで、疲れ目、肩こり、頭痛といった眼精疲労の症状を引き起こす「神経性眼精疲労」もある。

「中高年で眼精疲労がひどいという人は、眼科専門医に相談して目の精密検査をしてもらうといいでしょう。自分でも気が付かない目の病気が進行している可能性があります。テレビやゲームなどデジタル機器の使用による眼精疲労は、肩こりや頭痛など目以外の身体的疲労を伴う『VDT(ビジュアルディスプレーターミナル)症候群』を発症することもあり、その場合の眼精疲労の主たる原因は調節性眼精疲労と考えられます」

PC作業は1時間につき10分休む

では、眼精疲労が疑われる場合は、どうすればいいのか?

「会社でPC作業が欠かせないという人は、まずは理想的なPC作業環境を確保することです。具体的には、①十分な明るさ②画面と目の距離は4070センチ③視線はやや下向き④書類と目の距離が画面から目の距離とほぼ同じ⑤作業に適切な姿勢で座る⑥画面の反射をさえぎるフィルターの利用などが挙げられます。会社でPC作業される方はすでに会社側がこうした環境をつくってくれているでしょうからあまり心配ありませんが、自宅でリモートワークされる方はこうした点を再チェックされるといいでしょう」

PC作業1時間につき10分程度の休息をとる、近方を見る作業の間に壁に掛けられた時計など遠方のものを見るといった目の体操を意図的に挟むことなどは基本で、当然やっておきたい。

「老視の人はメガネが合わなくなっている可能性があります。老視は始まると急激に進むのでメガネを作って1年以上たったら、再検査をした方がいいでしょう。とくに出来合いの市販の老眼鏡を使っている人は、左右の視力が異なっていることが眼精疲労の原因になっている場合があります。こちらも気を付けなければなりません」

近視用のメガネを使っている人で老視が進んだ人は、累進メガネを使うことで眼精疲労の症状を軽減することができる。

ドライアイも眼精疲労を強めるため、座る位置やエアコンの位置を考える必要がある。

「強いドライアイも、適切な点眼液や涙点プラグの使用などにより症状が改善します。自分なりに工夫しても眼精疲労が軽減しないという人は、早めに眼科医に相談するといいでしょう」

意外と見落とされがちなのは、糖尿病が関係する眼精疲労だ。

⑤ 「老視の人はメガネが合わなくなっている可能性があります。老視は始まると急激に進むのでメガネを作って1年以上たったら、再検査をした方がいいでしょう。とくに出来合いの市販の老眼鏡を使っている人は、左右の視力が異なっていることが眼精疲労の原因になっている場合があります。こちらも気を付けなければなりません」

近視用のメガネを使っている人で老視が進んだ人は、累進メガネを使うことで眼精疲労の症状を軽減することができる。

ドライアイも眼精疲労を強めるため、座る位置やエアコンの位置を考える必要がある。

「強いドライアイも、適切な点眼液や涙点プラグの使用などにより症状が改善します。自分なりに工夫しても眼精疲労が軽減しないという人は、早めに眼科医に相談するといいでしょう」

意外と見落とされがちなのは、糖尿病が関係する眼精疲労だ。

「糖尿病の人はしばしば視力が変わることが知られています。それは血糖値が高くなると、浸透圧が変化して目の屈折状態が変わるからです。そのため、昨日は合っていたメガネが今日は合わなくなる、ということが起こりえます。まして、中高年では老視や白内障が進むため、メガネが数カ月で合わなくなることがあります。目が疲れる、見えづらいと感じたら眼科専門医に相談することです」

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