神経眼科

[No.3302] 不安を評価する質問紙法には何があるでしょうか?

CES-D(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)は、抑うつの評価に用いられる質問紙法ですが、不安を評価するための質問紙法も多く存在します。以下に代表的なものを挙げます。私はこの分野の質問紙は使ったことがありませんが、医療現場での使用頻度が高いのは HADS や GAD-7だそうです。

1. STAI(State-Trait Anxiety Inventory)

  • 概要: 状態不安(今現在の不安)と特性不安(個人の持続的な不安傾向)を測定する質問紙。
  • 構成: 40項目(状態不安20項目、特性不安20項目)。
  • 対象: 一般成人、臨床患者。
  • 使用例: 一時的な不安と持続的な不安を区別したい場合に適している。

2. HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)

  • 概要: 病院環境での不安と抑うつを評価する質問紙。
  • 構成: 14項目(不安スケール7項目、抑うつスケール7項目)。
  • 対象: 医療現場の患者(身体疾患を持つ人を対象に開発)。
  • 使用例: 身体疾患患者の精神的ストレスを評価するのに適している。

3. GAD-7(Generalized Anxiety Disorder-7)

  • 概要: 全般性不安障害(GAD)の評価に特化した簡便な質問紙。
  • 構成: 7項目。
  • 対象: 一般成人、医療現場の患者。
  • 使用例: 短時間で不安のスクリーニングを行いたい場合。

4. BAI(Beck Anxiety Inventory)

  • 概要: 不安の身体症状を中心に評価する質問紙。
  • 構成: 21項目。
  • 対象: 一般成人、精神疾患患者。
  • 使用例: 身体症状を伴う不安(動悸、めまい、筋緊張など)の評価に適している。

5. DASS-21(Depression Anxiety Stress Scales)

  • 概要: 抑うつ、不安、ストレスの3領域を評価する尺度。
  • 構成: 21項目(抑うつ7項目、不安7項目、ストレス7項目)。
  • 対象: 一般成人、臨床患者。
  • 使用例: 抑うつやストレスとの関連も評価したい場合。

6. PSWQ(Penn State Worry Questionnaire)

  • 概要: 過剰な心配や不安傾向を測定する尺度。
  • 構成: 16項目。
  • 対象: 全般性不安障害(GAD)の評価。
  • 使用例: 心配の頻度や強さを測定したい場合。

7. Fear Questionnaire(FQ)

  • 概要: 恐怖症や不安障害の評価に特化した質問紙。
  • 構成: 15項目。
  • 対象: 特定の恐怖症、不安障害を抱える人。
  • 使用例: 特定の恐怖や回避行動を評価したい場合。

用途別のまとめ

用途 推奨される尺度
一般的な不安評価 STAI, HADS, GAD-7, DASS-21
医療現場での簡易評価 HADS, GAD-7
身体症状を伴う不安評価 BAI
慢性的な心配・不安 PSWQ
恐怖症・回避行動 FQ

医療現場での使用頻度が高いのは HADSGAD-7 で、より詳細な評価をする場合は STAIBAI などが適しています。用途に応じて適切な尺度を選択すると良いでしょう。

◎ GAD-7(Generalized Anxiety Disorder-7)を入手できたとして、その評価法を教えてください:

GAD-7(Generalized Anxiety Disorder-7)の評価方法

GAD-7は、全般性不安障害(Generalized Anxiety Disorder: GAD)のスクリーニングおよび重症度評価のために開発された自己記入式の質問票です。7つの質問から構成され、それぞれの質問に対して過去2週間の頻度を4段階で評価します。

1. 質問内容

被験者は、以下の7つの症状について「過去2週間の間にどの程度の頻度で感じたか」を回答します。

  1. 神経が高ぶったり、不安になったり、非常に緊張したことがある
  2. 心配をコントロールできない、または心配しすぎると感じたことがある
  3. ささいなことで過度に心配することがある
  4. リラックスすることが難しいと感じることがある
  5. じっとしていられない、または落ち着かないと感じることがある
  6. 些細なことでもすぐに苛立ったり、怒りっぽくなったりすることがある
  7. 何か恐ろしいことが起こるのではないかという不安に襲われることがある

2. スコアリング

各質問に対する回答は、以下の4段階で評価されます。

  • 0点:まったくない(Not the all)
  • 1点:数日間(Some days)
  • 2点:半分以上の日(More than half the days)
  • 3点:ほとんど毎日(Nearly every day)

合計スコアは0~21点の範囲になります。

3.重症度の判定

合計スコアに基づき、以下のように不安症状の重症度を分類します。

  • 0~4点:正常範囲(Minimal anxiety)
  • 5~9点:軽度の不安(Mild anxiety)
  • 10~14点:中等度の不安(Moderate anxiety)→ 臨床的評価が望ましい
  • 15~21点:重度の不安(Severe anxiety)→ 精神科的介入を検討

4. 臨床的意義

  • カットオフ値:10点以上が臨床的に重要な不安障害の可能性を示唆するとされる。
  • 診断的価値
    • GAD-7スコア10点以上は全般性不安障害の診断において感度89%、特異度82%と報告されている。
    • さらに、他の不安障害(パニック障害、社交不安障害、PTSDなど)にも高い相関を示す。
  • 経過観察:治療の前後でスコアを測定し、症状の改善度を評価する。

5. 臨床応用

  • 初診時のスクリーニング:不安症状のある患者にGAD-7を使用し、診断の補助とする。
  • 治療モニタリング:薬物療法や認知行動療法(CBT)の効果を評価するために定期的に測定。
  • 他の精神疾患との鑑別:不安障害が疑われる場合に、うつ病の評価(PHQ-9など)と併用して判断する。

6.注意点

  • 自己記入式のため、主観的な評価に依存する
  • GADの確定診断には臨床医の評価が不可欠
  • 身体疾患による二次的な不安も考慮する(甲状腺機能亢進症、心疾患など)

まとめGAD-7は、全般性不安障害のスクリーニングに有用なツールであり、10点以上で臨床的に意義のある不安を示唆します。ただし、診断には臨床医の総合的な判断が必要です。

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