神経眼科

[No.274] 下垂体腫瘍と周期性外斜視:

清澤のコメント;以前南砂町清澤眼科を手伝って戴いて居たA先生から質問を戴きました。

後天性周期性外斜視(cyclic exotropia)は非常にまれな状態で、定期的な、最も一般的には48時間の周期で交互に起こる外斜視と正斜視の期間で構成される。 周期的外斜視よりも一般的である周期的内斜視は、成人よりも子供でより頻繁に発生することが報告されている。 

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Q; 31歳男性。 8年前に下垂体腫瘍で、両耳側半盲に。 オペ後に右目は視力1.2、視野も回復。 左は回復せず、視力は光覚弁か日により0.01が見える程度、視野検査不能。 1日おきに外斜視が出る。隔日性外斜視というものはどういう機序で起こるのでしょうか?

お答え:隔日性外斜視(周期性外斜視)ですか? 御質問ありがとうございます。 通常人の目をカバーテストしてみると、どちらかと言えば安静位は多少外斜しています 。 左右の視野の重なり合う部分を重ねる様にして人は左右の眼位を保っていますから、嫌色素性下垂体腺腫で両耳側半盲を持つ人はただでも左右の視野の重なり合いは保ちにく いはずです。殊に、両耳側半盲で左右の眼位がずれて複視を訴える状態をhemi-visual field slipとかと呼んだと思います。 この患者さんは悪い視力の目では視野が取れないといいますが、残存視力は有るので、 どこかに視野は残っているのでしょう。その残存視野を合わせられるときには正位にな り、合わせられないときに外斜しているのでしょう。 フージョンが保てなければ眼位はいずれ廃用性外斜視になってゆくでしょう。残念です が、斜視手術は斜視に戻るので将来的には無効かと思います。 hemi-visual field slipを論じた論文を最近書いたはずなので探してみます。

◎ 2019年12月2日 清澤眼科医院通信:11343:外傷性に視交叉病変および複視を来した一例:学会演題③

清澤のコメント:両耳側半盲を示すキアズマ症候群では左右眼の視野に重なり部分が少なくて、左右の視野がスリップしてしまう件が知られています。( The separation and vertical slip of the intact nasal hemifields develops with small changes in the alignment of the eyes. )この症例で 演者は「プリズム処方前に融像訓練を実施 することが有効 」だったといっています。(当院の提出演題です。)  -----

P-60 外傷性に視交叉病変および複視を来した一例 〇小町 祐子1、井手 奏絵1、石川 弘1、清澤 源弘1.2、 1清澤眼科医院、2東京医科歯科大学 【目的】交通外傷により眼球運動障害と両耳佃l半盲を合併し、複視を来した症例を経 験したので報告する。 【症例】40代男性。X年7月バイク事故での頭蓋底骨折により前頭葉脳挫傷。味覚・嗅覚 障害とともに両耳側半盲発症。本人によれば、眼球運動障害にともなう大きな偏位によ り複視を来していた。少しずつ症状の改善がみられていたが、4年後、運転時に遠方視で複視が増悪するとの主訴で当院を受診した。初診時視力:右(0.4)、左(1.2)。両耳側 半盲視野が認められた。眼位は近見16△ X(T)’、遠見8△ XT L/Rl△ 。2~ 3mより遠方で斜め方向の複視を訴えていた。MRIにて下垂体柄の腫大がみられたがホルモン検査 は異常なく、両耳側半盲は前交通動脈からの細枝のspasmによる循環障害によるもので あったと推定した。 【処置および経過】遠方視の複視に対し融像訓練を実施。日常視下での複視は融像可能 となったが、フロントガラス越しの遠方視では垂直方向の複視の残存により融像が困難 であった。垂直プリズム眼鏡による矯正をおこなうことで複視の改善がみられた。 【考察】融像訓練の上で垂直偏位のみプリズムで矯正することにより、水平方向の複視 に対して自己コントロールすることが可能となった。眼球運動障害に両耳側半盲を合併 することで融像がより困難であった症例に対しても、プリズム処方前に融像訓練を実施 することは有効であると考えられた。 Categorised in: 神経眼科

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