甲状腺切除の合併症としてのホルネル症候群
清澤のコメント:甲状腺切除手術に続発したホルネル症候群は回復するか?という質問を友人の眼科医師からいただいた。ご存じのように頭部の交感神経は頸椎2から4から出て、上向し、上頸神経節に至る。そこから更に上向枝(ascending brabch)を経て内頚動脈周囲に網状に広がる。眼瞼を引き上げる交感神経支配のミューラー筋や瞳孔散大筋はこの交感神経枝の支配を受けるから、その障害が典型的なホルネル症候群を示す。甲状腺切除術と片側のホルネル症候群の合併を述べた報告を探すと、いくつかの似た報告がある。具体的にどの部分の障害なのかと言えば先に述べた上頸神経節からの上向枝であろう。聞き取りにくいが下の動画で交感神経の解剖が復習できる。下の症例報告では、この報告時点で著者の病院でのホルネル症候群の合併した甲状腺切除手術は495件中1例(0.2%)のみであり、甲状腺切除にともなうホルネル症候群の報告28例中で自然回復例は7例だったとしている。
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甲状腺切除の合併症としてのホルネル症候群:症例報告
概要
甲状腺全摘術後の合併症として発生したホルネル症候群(HS)の症例を報告します。ホルネル症候群は、縮瞳、眼瞼下垂、眼球陥凹、および発汗の欠如を特徴とし、頸部交感神経鎖の損傷によって引き起こされる顔の片側の血管拡張を伴う。甲状腺切除後にHSが発症したという他の報告は28件のみであり、これらの患者のうち完全に回復したのは7件のみでした。1997年から2007年の間に当院で実施された495件の甲状腺切除のうち、HSの発症を合併症としたのは1件(0.2%)のみでした。患者は35歳の女性で、バセドウ病のために甲状腺全摘術を受けました。ホルネル症候群は術後2日目に現れたが、顔面の無汗症や血管拡張はなく、症状は3日後に自然に解消した。甲状腺切除後のHSの考えられる原因には、術後血腫、虚血誘発性神経損傷、および開創器による頸部交感神経鎖の伸展が含まれます。この患者の迅速かつ完全な回復は、頸部交感神経鎖が開創器の伸展によって損傷したことを示唆しています。
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