眼科医清澤のコメント:「朝起きた時に視界が赤く見えたという発作が一度有った」と訴える女児を拝見しました。色視症chromatopsiaでしょうか?ーーーーたとえば、小児が熱性痙攣を経験した場合、発作中に物が赤く見えるようになることがあるようです。また、片頭痛やてんかん発作でも、このようにな症状を引き起こす可能性があります。ただし、現状で石原式色覚検査表は正常で、眼底にも変化がなく、特別な薬物治療も受けてはいないので、この場合には経過観察でよさそうです。赤視症について、その報告は少ないのですが、心因性症例の報告があり、それを見ると期間は一月以内で消失したことが多いとされていました。(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1410206347)
一方、chromatopsia色覚症(すなわち、「色が見える」) は、心理学的な反応ではなくて、患者が実際に環境の色合いの知覚の増加を経験するまれな状態です。私が得意とする神経眼科の専門誌:Neuroophthalmology. 2021; 45(1): 56–60.に.( doi: 10.1080/01658107.2020.1797824)こんな記事が出ていました。
Erythropsia and Chromatopsia: Case Study and Brief Review
, この論文によれば、クロマトプシアは、環境色相の知覚される増加として定義され、通常論じられる色覚異常(色弱)またはアクロマトプシア(無色覚)とは正反対です。これは、①正常な光受容細胞分布の変化、②シナプス後ニューロンとの通信能力、または③シナプス後ニューロン自体の変化に起因する可能性があります。後天性色覚症の最も一般的な原因は、薬物の影響です。色覚異常を誘発する可能性のある薬物は何百もあります。
臨床医によく知られているものには、一般に治療レベルのジゴキシンによって引き起こされる黄視症または黄色の色相が含まれます。これは、色の識別の障害、より具体的には三色覚異常(青黄色の色覚異常)および非特異的な色の識別の喪失を引き起こす可能性があり
ます。シアノプシア、または青みがかった色合いは、一般に錐体のホスホジエステラーゼ (PDE) の阻害によるものです。PDE の顕著な機能は、サイクリックグアノシン一リン酸レベルを調節することであり、したがって桿体および錐体の光応答特性を調節します。
脈絡膜および網膜血管に PDE5 が存在するため、これらの薬剤は脈絡膜血流を増加させ、網膜血管系の血管拡張を引き起こします。
薬物効果以外に、
白内障の摘出、網膜疾患、および黄疸などの医学的疾患の後にも色覚症が発生します.
網膜出血を治療せずに放置すると、視細胞毒性が生じる可能性があります。出血が脱ヘモグロビン化されると、鉄イオンが周囲の網膜に放出されます。錐体は、ロッドよりも鉄を介した酸化的損傷に対してより敏感であることが知られています。しかし、出血の文脈でしばしば言及される鉄の毒性は、その経過の後期のイベントです。また、光受容体の内側と外側のセグメントがどの程度深刻な影響を受けたかを判断することも困難です。通常、網膜神経節細胞は、1 つの錐体クラスを活性化するためにベースラインを上回る発火率を必要とし、別の錐体クラスを活性化するためにベースラインを下回る発火率を必要とする、異なる錐体クラスの活性化 (色の対立) に対して敵対的な方法で応答します。この場合、出血の影響を受けた黄斑のこの部分の神経節細胞層には、約 90% のミゼット神経節細胞が含まれています。大部分は、色選択性を持たない赤緑の対戦相手です。人間の網膜にはこれらの細胞が十分に蓄えられているため、一部の損傷のみが損傷した場合、必ずしも色覚異常が見られるとは限りません。ただし、青黄の対立経路は、色、形態、およびおそらく分子的に、赤緑の対立細胞とは異なります。したがって、この経路は、疾患、全身送達された薬物、または患者のように出血に対する独特の脆弱性を持ち、赤血球症を引き起こす可能性があります。いくつかの研究では、S錐体の構造の組織学的な違いにより、S錐体が M錐体や L錐体よりも損傷を受けやすくなる可能性があることが示唆されています。また、傍中心窩網膜には、網膜の残りの部分よりも密度の高い S 錐体が含まれているという証拠もあります。しかし、色の知覚の複雑さを考えると、赤血球症が錐体の 1つの集団の選択的な損傷をもたらす可能性は低いと思われます。色覚異常にはさまざまな形があり、色覚障害のある患者には総合的な眼科検査が不可欠です。
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最後に:赤色視症に関しての考案はまだまだ不十分ですが、今日のところはこのくらいにいたしましょう。心理学的に心配事がないかといった話を臨床心理学の専門家に聞きだしてもらうことも無駄ではないかもしれません。(画像:https://www.medscape.com/viewarticle/902844から)
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