視神経炎の既往はなく、多発性硬化症として治療されている患者さんの相談を受けました。多発硬化症と視神経炎の関連について説明します。
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多発硬化症(MS)と視神経炎は、どちらも自己免疫性疾患であり、自身の神経細胞が自己抗体によって攻撃されることが特徴です。MSは中枢神経系の脱髄疾患の一つで、神経の線を覆っている髄鞘が炎症によって壊れ、神経症状の再発を繰り返す病気です。視神経炎は、視神経(視覚を司る神経)が炎症を起こし、視力低下や目のかすみなどの症状を引き起こします。
視神経炎は、多発硬化症の初期症状の一つとして現れることがあります。また、視神経炎が再発すると「再発性視神経炎」と呼ばれ、患者の約15%から20%では、同じ目に戻るか、もう一方の目で発症する可能性があります。
これとは別ですが類縁の疾患に視神経脊髄炎(NMOSD)という疾患もあり、これは視神経と脊髄だけでなく脳にも病変を呈することがあります。この疾患は、視神経脊髄型MSと言われていましたが、アクアポリン4(AQP4)抗体という自己抗体の発見により、NMOSDとして区別されるようになりました。更に抗MOG 抗体陽性視神経炎も見つかっています。
これらの疾患は、自己免疫説が有力で、遺伝的な因子と環境因子が影響していると考えられています。しかし、これらの疾患の発症メカニズムはまだ完全には解明されておらず、今後の研究が待たれています。
これらの疾患は個々の患者さんによって症状や経過が異なるため、それぞれの患者さんの状況に合わせて説明することが重要です。患者さんが不安を感じた場合は、適切なサポートやカウンセリングを提供することも大切です。
清澤の判断としては、視神経炎の治療を検討する際に、神経内科の主治医に抗MOG抗体や抗アクアポリン4抗体が陰性であることを問い合わせることも有用かと考えます。
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多発性硬化症:多発性硬化症 multiple sclerosis(MS)は、私も共同著者である「神経眼科臨床のために第4版 江本、清澤、藤野」には、簡便に次のように記載してあります。(今日は、抗MOG抗体とアクアポリン4抗体に関する記載は省略します。)
■概説■
● 多因子で原因不詳の中枢神経系脱髄疾患で,様々な神経症状が空間的・時間的に多発し,寛解・再発を繰り返す。
● 多彩な神経障害の1 つとして視神経炎を合併する。典型的には病変は長くない球後視神経炎でMRI や髄液所見などから診断を確定していく。
● ステロイドに対する反応は比較的良好である。
■文献■
1) 日本神経学会.多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017,医学書院:2017.
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このブログにモ多くの多発性硬化症や視神経炎に関する記事が有ります。参考までにリンクしておきます。
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