全身病と眼

[No.3328] 米国成人の糖尿病の有病率と管理

清澤のコメント:最新の米国医師会雑誌に「2013年から2023年までの米国成人の糖尿病の有病率と管理」という報告が出ています。対象者24,263人の約19%が糖尿病で、有病率は2013年の12.8%から2023年の14.1%へとわずかに増加。(P=0.25)。HbA1cの平均値は7.60%へと上昇(P=0.03)、血糖コントロール率は54.3%から43.5%に低下(P=0.02)していたという事です。その理由もいくつか考察されています。糖尿病には引き続きお気を付けください。

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2013年から2023年までの米国成人の糖尿病の有病率と管理

はじめに

COVID-19パンデミックは医療アクセスや生活習慣に影響を及ぼしましたが、糖尿病の有病率や管理状況への影響は十分に分かっていません。本研究では、2013年から2023年の米国成人における糖尿病の有病率と血糖管理の変化を分析しました。

方法

2013~2023年に実施された「国民健康栄養調査(NHANES)」のデータを用い、20歳以上の成人を対象に糖尿病の有病率と血糖管理の傾向を調査しました。糖尿病の診断は以下のいずれかを基準としました。

  • HbA1c 6.5%以上
  • 空腹時血糖126mg/dL以上
  • 医療機関での診断歴

血糖コントロールは、HbA1cが7.0%未満を「良好」と定義しました。年齢・性別を調整し、調査期間ごとの変化を解析しました。

結果

対象者24,263人のうち4,623人(約19%)が糖尿病でした。有病率は2013~2014年の12.8%から2021~2023年の14.1%へとわずかに増加しましたが、統計的に有意な差はありませんでした(P=0.25)。一方、HbA1cの平均値は2021~2023年に7.60%へと上昇(P=0.03)、血糖コントロール率は54.3%から43.5%に低下しました(P=0.02)。

特に20~44歳の若年成人では、HbA1cの平均値が2017~2020年の7.43%から8.51%に上昇し(P=0.03)、血糖コントロール率は57.4%から37.1%に低下しました(P=0.006)。他の年齢層では顕著な変化は見られませんでした。

考察

糖尿病の有病率に大きな変化はなかったものの、血糖管理の悪化が特に若年成人で顕著でした。その要因として以下が考えられます。

  • パンデミックの影響: 運動不足や食生活の乱れの増加
  • 精神的健康の問題: 社会的孤立やストレスの増加
  • 医療アクセスの制限: 若年成人は保険未加入率が高く、適切な治療を受けにくい

一方、高齢者はメディケアにより医療を安定して受けられ、管理の悪化が抑えられたと考えられます。

研究の限界

本研究には以下の限界があります。

  • NHANESの回答率低下による代表性の問題
  • 若年成人のサンプル数が少なく、ばらつきが大きい可能性
  • 人種・民族ごとの分析が含まれていない

結論

2013~2023年における米国成人の糖尿病有病率はほぼ横ばいでしたが、若年成人の血糖管理が著しく悪化しました。糖尿病の管理不良は心血管疾患リスクの上昇につながるため、若年層向けの公衆衛生対策が急務です。糖尿病管理の改善に向けた施策の検討が求められます。

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