脂肪肝と眼底検査の意外な関係 〜眼科医からみた全身の健康サイン〜
近年、「脂肪肝(NAFLD:非アルコール性脂肪性肝疾患)」が単なる肝臓の病気ではなく、全身の生活習慣病の一部として注目されています。驚くべきことに、脂肪肝のある人の目にも変化が現れることが、いくつかの研究から分かってきました。⇒この前の脂肪肝の記事と併せてご覧ください。
脂肪肝とは?
脂肪肝は、アルコール摂取が少ないにもかかわらず、肝臓に脂肪がたまってしまう状態で、放置すると肝炎や肝硬変、肝がんに進行するリスクがあります。背景には肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常など、いわゆる「メタボリックシンドローム」が深く関係しています。
眼底変化との関係
眼科で行う眼底検査では、網膜の血管や視神経乳頭の状態を観察できます。最近の研究では、脂肪肝と以下のような眼底所見の変化が関連していることが指摘されています。
1. 網膜血管の狭小化・蛇行
脂肪肝のある人では、網膜の細動脈が狭くなったり、蛇行することがあります。これは、高血圧やインスリン抵抗性により血管機能が障害されているサインとも考えられます。
参考文献:
Sun C, et al. Retinal vascular caliber and non-alcoholic fatty liver disease in an Asian population. Am J Gastroenterol. 2015;110(4):572–578.
https://doi.org/10.1038/ajg.2015.38
2. 動静脈交叉現象の強調
血管壁の厚みが増すことで、網膜動静脈交叉部の圧迫所見がはっきりと観察されることがあります。これは、網膜の微小血管障害が進んでいる可能性を示します。
3. 視神経線維層の菲薄化
脂肪肝のある患者では、視神経周囲の神経線維層(RNFL)が薄くなっているという報告もあります。これは糖尿病性神経障害の初期変化とも似ており、NAFLDと神経変性との関連が疑われます。
参考文献:
Lee MJ, et al. Non-alcoholic fatty liver disease is associated with decreased retinal nerve fiber layer thickness. PLoS One. 2017;12(10):e0186336.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0186336
眼底検査は全身の鏡
眼底は「全身の健康状態を映す鏡」とも言われています。脂肪肝のある方に眼底所見の異常が見つかる場合、それは単なる眼の病気だけでなく、生活習慣病全体の進行サインかもしれません。
参考文献:
Cheung CY, et al. Retinal vascular imaging in cardiovascular and metabolic medicine. Curr Cardiovasc Risk Rep. 2012;6:47–56.
https://doi.org/10.1007/s12170-011-0205-3
当院からのご提案
当院では眼底カメラやOCTを使って、網膜や視神経の状態を丁寧にチェックしています。脂肪肝や糖尿病など、全身の病気をお持ちの方も、眼科的なフォローアップをお勧めします。早期発見・早期対策で、目だけでなく全身の健康を守りましょう。
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