【眼科院長ブログ】次の波は来るのか?―2025-2026年COVID-19ワクチンと変異株の最新情報
2025年秋に向けた新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンは、またもや「過去の流行株」を対象に作られています。とはいえ、それは仕方のない事情によるものです。製薬会社は、ウイルスの変異スピードに追いつくよりも前に、数か月かけてワクチンを製造・供給しなければなりません。
今年の米国のワクチンは、2024年6月にFDAが推奨した「LP.8.1」という株やその親株「JN.1」をベースにしていますが、実際にはすでにこれらを追い越して、新たな株(NB.1.8.1やXFGなど)が主流となりつつあります。
では、それでも効果はあるのでしょうか?
北京大学の免疫学者・曹雲龍博士らによれば、「LP.8.1やJN.1と最新株との抗原性は近く、重症化予防の効果は期待できる」とのこと。つまり、多少のズレはあるものの、現行ワクチンも一定の有効性を保っているようです。
ただし、ここで大きな問題があります。それは、変異株の監視体制の弱体化です。
米CDC(疾病予防管理センター)の変異株トラッカーは、2025年7月時点で1か月以上更新が滞っており、掲載されている情報の精度も低下しています。これは、PCR検査の減少や研究資金の打ち切りが原因です。たとえば、米コロンビア大学のホー博士は、NIHからの資金が8月で切れるにもかかわらず、更新申請に返事がないと訴えています。
変異株の監視は「見なければ分からない」ものです。ウイルスの性質は絶えず変わるため、今後「ブラックスワン」と呼ばれるような予測不能の大変異が再び起こる可能性も否定できません。過去にはオミクロン(2021年)、XBB(2022年末)、JN.1(2023年)がその例です。
進化のスピードに対抗するには、常時の監視と迅速な対応が欠かせません。日本でも「もう終わった話」と思わず、特に基礎疾患のある方や高齢者は引き続き注意が必要です。
私たち医療従事者も、眼科の外来診療の場で、患者さんが体調不良を訴えるときには、新型コロナやインフルエンザとの関連を念頭に置き、慎重に対処する必要があります。
コメント(清澤):
先日は、都内の大病院に入院する新型コロナ感染に伴う老人患者が増えていることを医師会の納涼会で聞いてきてお伝えしました。日射病の仮面をかぶって救急車で来院するそうです。今後も新型コロナは「静かに」変異を続け、ワクチン開発や流行予測を難しくしていくことが予想されます。眼科医としても、基礎疾患を持つ患者さんや高齢者の予防意識を維持してもらうために、こうした情報を共有し続けていきたいと感じました。この記事は星進悦君に教えてもらいました。
出典:
Rita Rubin. SARS-CoV-2 Variants Challenge Surveillance Efforts and COVID-19 Vaccines. JAMA. Published Online August 1, 2025. doi:10.1001/jama.2025.12273
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