全身病と眼

[No.4506] 帯状疱疹のあとに見つかった結膜の腫れ ― リンパ腫の可能性も含めてどう考えるか

帯状疱疹のあとに見つかった結膜の腫れ ― リンパ腫の可能性も含めてどう考えるか

今回は、50歳女性、免疫状態に大きな異常はなく、眼部帯状疱疹(ヘルペスゾスター・オフサルミクス)の発症から約2か月後に、上方の白目(眼球結膜)に10×15mmの腫れが見つかったケースを、一般の方にもわかりやすく整理します。

まず最初の設問は、「この腫れは帯状疱疹の炎症の名残なのか、それともリンパ腫のような腫瘍性の病気なのか」という点です。帯状疱疹はウイルスが再活性化して起こる病気で、目のまわりに炎症を起こします。炎症が強いと、結膜にリンパ球という免疫細胞が集まり、一時的に“リンパ腫のように見える腫れ”をつくることがあります。これを反応性リンパ増殖(偽リンパ腫)と呼びます。

一方で、結膜にはまれにMALTリンパ腫というタイプの低悪性度リンパ腫が生じることがあります。これはゆっくり進行するB細胞由来の腫瘍で、特徴的に“サーモンピンク色”の平たい腫れとして見えることがあります。今回のように大きさが1cmを超え、2か月たってもはっきり残っている場合、炎症だけでは説明しきれない可能性が出てきます。

重要なのは、「帯状疱疹が直接リンパ腫を引き起こす」という確立した証拠はない、という点です。ただし、帯状疱疹をきっかけに眼科を受診し、その過程で偶然リンパ腫が見つかることはあり得ます。ですから、時間の経過と大きさを踏まえ、慎重に評価する必要があります。

次の設問は、「今後どうするのか」です。小さく、徐々に縮小するようであれば、炎症後変化の可能性が高く、経過観察という選択もあります。しかし今回のように10×15mmと比較的大きく、数か月持続している場合は、組織検査(生検)で確かめることが勧められます。

生検では、顕微鏡で細胞の並びを観察し、さらに免疫染色という方法でB細胞が単一クローンかどうかを調べます。もし単一クローン性が証明されればMALTリンパ腫と診断されます。逆に多クローン性であれば反応性増殖と判断されます。

仮にMALTリンパ腫であっても、このタイプは進行がゆっくりで、適切な治療により良好な経過をたどることが多い疾患です。局所放射線治療や、場合によっては全身評価を行い、ステージを確認します。命に直結するような急激な悪性腫瘍とは性格が異なります。

今回、専門施設に紹介したのは、「万一リンパ腫であった場合に、速やかに正確な診断と治療計画を立てるため」です。紹介=重大、という意味ではなく、「念のためきちんと調べましょう」という姿勢です

まとめると、この症例のポイントは次の通りです。

帯状疱疹後2か月、10×15mmの結膜腫脹。炎症後の反応性増殖の可能性はあるが、大きさと持続期間からMALTリンパ腫を除外する必要がある。確定には生検が必要。仮にリンパ腫であっても、多くは治療可能で予後は比較的良好。

目の「白目の腫れ」は、痛みがないため軽く考えられがちですが、サイズが1cmを超える場合は専門的評価が重要です。帯状疱疹のあとに何か変化が残る場合も、自己判断せず相談していただきたいと思います。


参考文献

図は:Conjunctival Tumors » New York Eye Cancer Center

  1. Coupland SE, et al. Ocular adnexal lymphomas. Eye. 2013.

  2. American Academy of Ophthalmology. Basic and Clinical Science Course: External Disease and Cornea.

  3. Ferry JA. Extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue. Mod Pathol. 2001.

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