全身病と眼

[No.443] アトピーと目の合併症

清澤のコメント:アトピー性皮膚炎には白内障や網膜剥離が合併することが有るという記事が出ていました。私も以前に興味を持って実際の患者さんを調べたことがありました。当時の記事の再録から始めます。

アレルギー相談室 Q&A 眼科
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自由が丘清澤眼科 院長
東京医科歯科大学眼科臨床教授(寄稿当時)

清澤源弘
Key ward:
アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、白内障、網膜剥離、円錐角膜
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Q:アトピー性皮膚炎には白内障や網膜剥離が合併することが有ると聞きましたが本当ですか?
A:日本人のアトピー性皮膚炎は軽いものも含めると1000万人にも及ぶともいわれています。アトピーには皮膚の症状だけでなく、様々な眼の症状もあります。その中でももっとも代表的なのが白内障と網膜剥離です。

私は以前、アトピー性皮膚炎患者の眼の症状を調べたことがあります。この結果ではアレルギー性結膜炎が最も多く34に見られました。ついで多かったのが白内障で25角膜表面の細かい傷が12%、そして網膜剥離も11に見つかりました。円錐角膜もアトピー性皮膚炎に伴うものとして知られていますが、これは1%のみでした。
白内障は本来透明な水晶体が白く曇る疾患です。多くは老人に見られますが、アトピー性皮膚炎では若い人にも見られます。アトピーに伴う白内障の年齢分布は14歳から43に広がっていて、その平均年齢は23歳と若年でした。性差はなく、男性では31%、女性では18%が白内障を持っていました。アトピー性皮膚炎患者の白内障有病率は日本や海外の文献でも1037%です。そのうち左右両眼に水晶体の混濁があるものが75%で、アトピーの白内障は両眼に出やすいのです。また水晶体混濁は通常の老人性白内障と違って、水晶体の前後嚢に多く見られました。
白内症手術では術後の水晶体嚢収縮も強く、場合によっては正しい場所に入れた人工水晶体が暫くしてから偏移を示すことがあります。水晶体の前嚢切開は大きく開け、水晶体嚢をしっかり押し開く強い足を持った人口水晶体を選ぶことが推奨されています
次にこの疾患での重要な合併症である網膜剥離は患者の11が持っていました。男性では16%、女性では5%であり、年齢分布は1430歳でその平均は21歳でした。これは国内の諸文献でも08%です。この比率は、網膜剥離の自覚症状がない患者さんを対象としたものですから、一般市民における網膜剥離の日本人での発生率である一年間で1万人に1人という比率と比べれば、大変に高い頻度です。日本人のアトピーには網膜剥離が特異的に多いと言うことがあるかもしれません。
私が見た症例での経験では、両眼性の網膜剥離症例が4例で片眼のみの症例は5例でした。普通に比べると両眼性網膜剥離の比率も低くはありません。このち77%は白内障も合併していましたので、眼底のよく見えない白内症患者では白内障手術を行う際に、網膜剥離が眼底に隠れていないことをよく見極めることが重要です。
さらにこのアトピー性皮膚炎に伴う網膜剥離は網膜の最周辺部、即ち網膜鋸状縁での断裂が多く、網膜格子状変性からおきることが多い通常の網膜剥離とは違った特徴を持っています。アトピーの患者さんは、あまりの痒さに眼球を叩く傾向があり、そのために発生する外傷性の剥離が多いからこのような特徴をもつのだ言う説や、炎症で特にこの鋸状縁が弱っているから剥離が多いのだろうなどの緒説があります。

1)Taniguchi H, Ohki O, Yokozeki H, Katayama I, Tanaka A, Kiyosawa M, Nishioka K.
Cataract and retinal detachment in patients with severe atopic dermatitis who were withdrawn from the use of topical corticosteroid J Dermatol. 1999 :26:658-65..

2)アレルギーの臨床3252012 (92478ページ)上記の記事はここからの採録です

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本日の記事は:
~定期的な眼科受診を(藤田医科大学ばんたね病院総合アレルギー科・総合アレルギーセンター 矢上晶子教授)~に生地が出ていました。

 アトピー性皮膚炎の合併症にアレルギー性結膜炎が多いことは知られているが、その他の目の疾患も起こり得る。藤田医科大学ばんたね病院(名古屋市)総合アレルギー科・総合アレルギーセンターの矢上晶子教授に聞いた。

アトピー性皮膚炎の治療を受けることが大事

 ▽白内障が1~3割

 矢上教授は「アレルギー性結膜炎や目の周りの皮膚に湿疹やかゆみがあると、特に未成年の場合、目の辺りをこすったり、たたいたりすることが多くなります。それを繰り返すうちに目に傷ができ、さまざまな眼病変を招くきっかけになります」と説明する。

 「目の表面の角膜が傷つくと、角膜がただれる、濁るなどの異常が生じます。角膜が部分的に薄くなる『円すい角膜』に進んだり、さらに白内障や網膜剥離を起こしたりすることもあります」。白内障は1~3割、網膜剥離は1~8%の割合でアトピー性皮膚炎に合併すると報告されているという。

 また、緑内障を起こす場合もある。「目の周りの皮膚へのステロイド外用薬や目の炎症を抑えるステロイド点眼薬を長く使用している人は、緑内障のリスクが高くなります」と矢上教授。

 「逆に、ステロイドによる副作用を心配してまぶた周囲の湿疹の治療を行わないと、湿疹やかゆみが続き、長期間かいたりたたいたりすると、手術が必要な白内障や網膜剥離になってしまうこともあります」

 ▽皮膚の治療・ケアを

 「アトピー性皮膚炎の患者さんの5~7割に何らかの目の合併症があると考えます。起きたら、眼科で早期に治療を受けてください。放置したり、不適切な民間療法を行ったりしているうちに進行し、失明する人もいます」と矢上教授。

 「目の症状は、早期だと気付かないことがあります。視力低下などの自覚症状がなくても、眼科を定期的に受診し、合併症がないかをチェックしてもらってください」

 その上で矢上教授は「目の合併症を予防するためにも、アトピー性皮膚炎に対する治療を適切に受けることが非常に重要です」と訴える。

 症状によって、ステロイド外用薬や非ステロイド外用薬をうまく使い分けた治療が望まれる。「未成年の場合は、スキンケアをきちんと行えるよう、家族の協力が必要です。信頼できる医療情報を得ることも大切です」と話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)(2022/03/21 05:00

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終わりにアトピー性皮膚炎の機序についてはその後に知見が増えた部分もあります。しかし臨床的にどのような合併症があるかについては変わってもいないようですので、旧聞に属するところですが、私の古い記事も再録いたしました、ご容赦ください。

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