近視・強度近視

[No.470] 強い近視の人は気をつけたい目の病気 「病的近視」は失明原因第3位 、 60歳からの健康術眼科編(5)

強い近視の人は気をつけたい目の病気 「病的近視」は失明原因第3位

眼科医清澤のコメント:60歳からの健康術眼科編(5)は、強い近視の人は気をつけたい目の病気 「病的近視」は失明原因第3位 公開日:2022年04月01日です。日本医師会雑誌でも病的近視、強度近視が特集で取り上げられており、眼鏡を使っても視力が出なくなる恐れのある強い近視は眼科だけでなく医学界でも広く注目されています。

――――本文再録――――

人口の1%が病的近視

 かつて近視は、ある程度進むと、それ以上は進まないといわれた。ところが近年は近視は一生涯進むとされ、高齢になるとその弊害が心配されるようになっている。今回は強度近視に関連する目の病気を考えたい。

 強い近視が原因で目の障害や失明に至ることを「病的近視」と呼ぶ。失明原因の第3位で、日本には15万人の患者がいるといわれている。

「角膜や水晶体の屈折力を示す単位をジオプター(D)と言い、近視は『-D』で表します。-8Dより強い近視が病的近視で、人口の1%程度いるとされています。病的近視では、眼球が引き伸ばされることで目の奥にある網膜や脈絡膜(網膜の奥にある薄い膜で血管とメラニン色素に富み、眼球の栄養をつかさどる。瞳孔以外からの光を妨げて眼球内の暗さを一定にする働きがある)が引っ張られて損傷を受け、ものが歪んで見えるなど機能を果たさなくなる『近視性網脈絡膜萎縮』、眼底で血液の成分が染み出したり出血やむくみを生じる『近視性脈絡膜新生血管』を起こしやすいことがわかっています。視神経が集中する網膜や黄斑部などがはがれ、視野の中心部が見えなくなる『近視性中心窩分離症』、『黄斑円孔』などにも注意が必要です」

 脈絡膜に新たなもろい血管を生じる目の病気は複数ある。日本人の失明第1の原因となる黄斑変性症の滲出タイプがその代表だが、それ以外では「近視性脈絡膜新生血管」が目立つ。

「その異常血管の特徴は加齢黄斑変性での新生血管よりも狭い範囲にとどまることが多く、眼底写真でも見逃されることが多い。強度近視の5~10%に生じていて、網膜の真ん中にある中心窩付近に多く見られます」

 なぜ、目の奥で異常な血管が生えてくるのか?

「脈絡膜が痩せたり血流不全などにより網膜に血液が届かずに栄養不足を生じ、最終的に脈絡膜新生血管を起こすという説があります。無治療だと10年後には96%に網膜に脈絡膜萎縮が発生し、矯正視力は0.1以下になるといわれています」

 近年、その診断には蛍光眼底撮影と共に光干渉断層計(ОCT)が行われている。それによると、網膜の浮腫や網膜の下に染み出した血液の滲出液は加齢黄斑変性よりも少ないことがわかっている。

 

「以前、盛んに行われた網膜光凝固を代表とする新生血管に対する手術は、手術後に凝固斑が拡大することや、新生血管の再発が認められるため最近は少なくなっています。代わって治療の中心は抗VEGF薬の眼球内への注射へと移行しています。点眼麻酔後に細い注射針を用いて硝子体内に注射する治療で、予後は比較的良いことが知られています」

 なお、黄斑円孔が完成した症例では積極的に手術が行われるという。

メルマガ登録
 

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。