清澤のコメント:先日から予告させていただいていた「みんなの眼科教室 教えて清澤先生」の新シリーズが今朝からネットのみの配信ですが、10報ほど連日で掲載していただけることになりました。今シリーズの第1報は「合わない眼鏡をかけ続ける恐ろしさ さまざまなトラブルにつながる」公開日:2021年12月12日です。これから学校の黄色い紙をもって小中学生が眼科医院を訪れる季節になります。
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合わない眼鏡をかけ続ける恐ろしさ さまざまなトラブルにつながる
① 【Q】残業が減って収入が少なくなったので、多少違和感があるけれども安い眼鏡ですませています。そのうち慣れるからとかけ続けていますが、少し不安です。(28歳・男性)
【A】合わない眼鏡としては、度が強すぎるメガネと弱すぎる眼鏡、乱視の合っていない眼鏡などが考えられます。
眼精疲労を訴えて来院した患者さんが、遠視なのに近視の眼鏡を持参してきたりすることも稀ながらあります。こうしたケースは、調節力極大の状態で自動屈折計が打ち出した屈折値を基に眼鏡を作成したものの、目の緊張を解いてみたら実は遠視だったというわけです。
まず、最も多い近視の眼鏡を考えてみましょう。自動屈折計に依存しすぎた眼鏡処方をされると、強すぎる近視眼鏡になります。この状態の眼鏡使用では、近見時に強い調節負荷が強いられるので非常に強い目の疲れ(眼精疲労)と頭痛や眼痛を訴えることになります。
② 強すぎる近視の眼鏡は「過矯正眼鏡」と呼ばれます。屈折と調節の矯正を専門とする眼科の先生によると、「来院する患者の7割はよく見えすぎている“過矯正”の眼鏡をかけている。過矯正は視力に悪影響があり、頭痛や吐気などの体調不良の原因にもなる」ということです。
この先生に言わせれば、合わない眼鏡をかけている人は、来院患者全体の8~9割にも及ぶとのこと。特に気をつける必要があると話すのは、度数の強すぎる眼鏡=「過矯正」の眼鏡です。
過矯正が引き起こすトラブルは、眼精疲労だけではありません。過矯正の眼鏡は、特に若い小中学生で近視を進行させるリスクも増大させてしまいます。いまだに議論は続いているものの、「過矯正は避けるべき」との結論はすでに出ています。とりわけ眼精疲労を引き起こすという観点からは、過矯正は避けるべきです。
③ 眼鏡が合っていない人のうち、およそ7割以上が過矯正です。「よくない」とわかっている過矯正の眼鏡を選んでしまうのは、近業が多くなった現代でも遠くを見る能力を示す「遠見視力」信仰があるからです。そのため、眼鏡を購入する際に「遠くがよく見えるように」作ってしまいがちになっています。
遠視の患者さんには、凸レンズの眼鏡を処方することになります。この場合、ピントが合わせにくくなる調節麻痺に対しては、サイプレジンやアトロピンなど普段使うミドリンPより強い薬を用いて、しっかりと眼内の毛様体筋の緊張を取り去ってから屈折値を求める必要があります。
遠視の眼では、調節の努力をすると何とか遠方の指標が読めてしまいます。本人がピント合わせをあきらめて放棄してしまえば、その眼はやがて弱視へと進行します。
眼鏡の使用を嫌う親子であれば、無理やり何とか遠方の視標が見えれば、メガネを希望しないこともあります。しかし、近方での視力を測るとよい視力が得られていないことが多いのです。
④ この場合にも調節麻痺剤を点眼して、十分に毛様筋の調節力を奪って隠れた遠視をあぶり出し、十分な凸レンズの眼鏡を作成する必要があります。その処置をし損なうと、児童は最初、眼の疲れを訴え、その眼はしばしば弱視や内斜視へと進行してしまいます。
あなたの眼鏡は最適になっていますか? 遠視にしろ近視にしろ、目に合った眼鏡処方が必要だということです。
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1953年、長野県生まれ。東北大学医学部卒、同大学院修了。86年、仏原子力庁、翌年に米ペンシルベニア大学並びにウイリス眼科病院に留学。92年、東京医科歯科大眼科助教授。2005-2021年清澤眼科医院院長。2021年11月自由が丘 清澤眼科を新たに開院。日本眼科学会専門医、日本眼科医会学術部委員。日本神経眼科学会名誉会員など。
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