子どもの近視進行を防ぐ3つの方法
―仮性近視と軸性近視の違いをふまえて―
近年、子どもの近視が急増しています。特に小学生から中学生にかけて、視力が急に落ちてしまうケースが多く、保護者の方々から「目が悪くならないようにする方法はないですか?」というご相談を受けることが増えています。近視は放置すると進行しやすく、将来的に眼の病気(緑内障、網膜剥離、黄斑変性など)のリスクも高まるため、早期に対応しておくことが重要です。
本稿では、近視の進行を防ぐ3つの有効な方法について、仮性近視と軸性近視の違いも交えて、わかりやすく解説します。
■ 近視の2つの段階:仮性近視と軸性近視
まず「仮性近視」と「軸性近視」の違いを理解しておきましょう。
- 仮性近視(調節緊張症)
長時間近くを見続けたことにより、ピント調節を行う筋肉(毛様体筋)がこわばってしまい、遠くを見る時にも緊張が解けずに視力が一時的に低下する状態です。
→ この段階では目薬(調節麻痺薬、ミドリンM)などの治療で回復可能です。 - 軸性近視(真の近視)
眼球の前後方向の長さ(眼軸)が伸びてしまい、構造的にピントが合わなくなる状態です。これは仮性近視とは異なり、眼鏡やコンタクトでの矯正が必要で、自然には治りません。
近視の治療では、この2つをしっかりと見極めることが大切です。
■ 近視の進行を抑える3つの方法
① 一日2時間の戸外活動(自然光の中で遊ぶ)
最も手軽で、しかも保険診療の枠にとらわれず誰でも始められる予防策です。
- 太陽光には「バイオレットライト(360–400nm)」が含まれ、これが眼軸の伸長を抑制する効果を持つとされています。
- 外遊びや散歩、屋外でのスポーツ活動が推奨されます。
- 日本眼科医会も「毎日2時間の戸外活動」を推奨しています。
費用:不要(無料)
推奨年齢:全年齢
② 低濃度アトロピン点眼(0.025%)
調節筋の緊張を軽くするとともに、軸性近視の進行そのものを抑制する効果が近年の研究で明らかになっています。日本でも0.025%濃度の「マイオピン」などが処方されています。
- 点眼は夜1回、両眼に行います。
- 視力改善のための点眼ではなく、進行を抑制する予防的な治療です。
- 自由診療扱い(保険適応外)で、月数千円〜が相場です。
費用:自由診療(自費)
推奨年齢:小学校低学年以降
③ オルソケラトロジー(就寝中に装用する特殊ハードコンタクトレンズ)
夜寝ている間に特殊なハードレンズを装用することで角膜の形状を変え、日中は裸眼で過ごせるようにする矯正方法です。
このオルソケラトロジーにも、近視進行を抑える効果があることが報告されています。
- 専用のレンズを毎晩装用する必要があります。
- レンズ管理が重要で、定期検診が欠かせません。
- こちらも自由診療(自費)です。
費用:初期費用10万円前後+管理費(月額)
推奨年齢:小学生〜中学生以降
■ まとめ:年齢・進行段階に応じて組み合わせを
方法 |
対象 |
効果 |
保険 |
留意点 |
戸外活動 |
すべての子ども |
◎ |
○(無料) |
習慣づけが重要 |
低濃度アトロピン点眼 |
小学生〜 |
◎ |
✕(自由診療) |
医師の管理が必要 |
オルソケラトロジー |
小学生〜 |
◎ |
✕(自由診療) |
レンズ管理が必要 |
■ 保護者へのメッセージ
今回の話題は本人と両親の他、祖父母の方々にもお伝えしたい情報です。
お子さんが「黒板が見えにくい」と言い始めたとき、それは仮性近視かもしれません。仮性のうちに対策をすれば元に戻せることもあります。しかし、軸性近視になってしまうと、治療の目標は「視力を回復させること」ではなく「進行を抑えること」に変わります。
早めの受診と、継続的な予防的対応が何より大切です。気になる症状がある場合は、ぜひ眼科にご相談ください。
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