コンタクトレンズ・眼鏡処方

[No.4612] 世界のコンタクトレンズ処方動向と日本の現在とこれから ―堀裕一先生(東邦大学)の記事をもとに―

世界のコンタクトレンズ処方動向と日本の現在とこれから

―堀裕一先生(東邦大学)の論文をもとに―

(東京都眼科医会報274号 P2–P5)

今回は、東邦大学医学部眼科学講座の堀裕一先生による総説「世界のコンタクトレンズ処方動向と日本の現在とこれから」をご紹介します。国際調査に基づいた内容であり、日常診療にも大変示唆に富むものです。


1.国際コンタクトレンズ処方調査

(International Contact Lens Prescribing)

コンタクトレンズの世界的な動向は、2001年から毎年行われている国際調査によって把握されています。各国の眼科医や専門家が処方データを報告し、それを集計する仕組みです。日本も初回から参加しており、近年は日本コンタクトレンズ学会が中心となってデータ収集が行われています。

この調査により、「どの国でどのようなレンズが使われているか」が明らかになり、世界の流れと日本の立ち位置を客観的に知ることができます。


2.患者背景とレンズ種別にみる日本の特徴

2024年の調査では、世界19か国・約1万件のデータが集まり、日本は1,800例以上と最多でした。これは日本のコンタクトレンズ診療の質の高さを示しています。

世界ではソフトコンタクトレンズが約9割を占め、1日使い捨てと定期交換型がほぼ同程度です。一方、日本では1日使い捨てレンズが半数以上と非常に多く、安全性を重視する傾向が強く出ています。

さらに日本では、ハードコンタクトレンズの割合が14%と世界平均より高いのも特徴です。強い近視や乱視に対して、従来からハードレンズが積極的に使われてきた歴史が背景にあります。


3.トーリックおよび多焦点レンズの国際比較

乱視用のトーリックレンズは世界では約3割を占めますが、日本では2割強にとどまります。価格や装用感の問題に加え、医師側が積極的に勧めていないことも影響していると堀先生は指摘しています。

また、老視に対応する多焦点コンタクトレンズは、欧米では3割前後に達する国もあるのに対し、日本では約1割です。「見え方に慣れにくい」「処方が難しい」といった理由が挙げられますが、患者さんへの情報提供不足も一因とされています。

この分野は今後、日本で大きく伸びる可能性がある領域といえるでしょう。


4.ハードコンタクトレンズの国際動向と強膜レンズ

一度減少したハードコンタクトレンズは、近年再び増加傾向にあります。その背景にあるのが「強膜レンズ」です。

強膜レンズは直径が大きく、黒目ではなく白目(強膜)で支える構造を持ちます。レンズと角膜の間に涙液をためることで、角膜に触れずに安定した視力を得ることができます。そのため、円錐角膜や不正乱視、重症ドライアイなど、従来のレンズでは対応が難しい症例に有効です。

日本では長らく未承認でしたが、2025年に初めて承認されました。これにより、これまで装用困難だった患者さんにも新たな選択肢が生まれました。

ただし、装用には人工涙液の使用や衛生管理が必要であり、感染や角膜への負担といったリスクもあるため、適応の判断と指導が重要です。


5.今後の展望のまとめ

今回の調査から、日本の特徴として、①使い捨てレンズの多さ、②トーリック・多焦点レンズの少なさ、③ハードレンズの比較的高い使用率が明らかになりました。

一方、世界では強膜レンズの普及が進み、より高度な視機能の改善が可能になっています。日本でも承認されたことで、角膜疾患の患者さんに対する治療の幅は確実に広がると期待されます。

今後は、適切なレンズ選択とフィッティング技術の向上、そして患者さんへの十分な情報提供が重要になります。コンタクトレンズは単なる便利な道具ではなく、視機能を支える医療機器として、より個別化された選択が求められる時代に入っているといえるでしょう。


(清澤のコメント)

堀先生の論文は、日本のコンタクトレンズ診療の現在地を非常に明確に示しています。特に強膜レンズの承認は臨床的に大きな意味を持ち、これまで「どうしても合わなかった患者」に対する新たな突破口になると感じました。今後は適応の見極めと技術の普及が鍵になるでしょう。

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