小児の眼科疾患

[No.3471] 負のカッパ角に伴う偽外斜視とは

学校の眼科健診の季節になりました。斜視疑いの「偽斜視(ぎしゃし)」として知られるabnormal angle Kappa(異常角カッパ)は、見かけ上の斜視pseudo-strabismus)の原因となる重要な概念の一つです。以下に、その定義、分類、臨床的重要性を説明します。

  1. カッパ角(angle Kappa)とは?

カッパ角(angle Kappa)とは、

  • 視軸(visual axis:固視している対象から角膜中心を通り、網膜中心窩に達する線。
  • 眼球の光軸(optical axis:角膜と水晶体の光学的中心を結ぶ線。

この視軸と光軸の間の角度カッパ角です。

  1. 正常な角カッパ角
  • 通常、角カッパは+角カッパ(positive angle Kappaであり、視軸は光軸よりやや鼻側に位置します。
  • そのため、正面を向いているときに角膜反射(Hirschberg testでの反射)は角膜の中心より少し鼻側に位置するのが正常です。
  1. 異常カッパ角(abnormal angle Kappa)と偽斜視

1)正の異常角カッパ(abnormally large positive angle Kappa

  • 視軸が極端に鼻側にある場合、角膜反射がより鼻側に見える
  • 結果として、他人から見ると目が外を向いているように見える(外斜視様)
  • これは魏斜視(pseudo-exotropia)と呼ばれます。

2)負のカッパ角(negative angle Kappa

  • 視軸が光軸より耳側にある場合
  • 角膜反射は角膜中心より耳側に位置
  • 結果として、内斜視様に見える(pseudo-esotropia
  1. 臨床的意義

偽斜視(pseudo-strabismus)と鑑別すべき点:

  • 本当の斜視(true strabismus)との区別が必要です。
  • カバーテスト(cover test)で斜視か否かを評価。
  • 特に小児の場合、親が「目がずれている」と心配して来院することが多い。

その他の臨床状況:

  • 白内障手術や屈折矯正手術後にカッパ角の変化が起こり、光視症や中心窩とIOL光軸の不一致が問題になることも。
  • 多焦点眼内レンズ挿入時には、角カッパの大きさが適応選定の重要な要素。
  1. まとめ

項目

正常

異常(魏斜視)

カッパ角

約+5度(視軸が光軸より鼻側)

正の角カッパ過大 or 負の角カッパ

見かけ

やや外向きに見えるが正常

実際は正位でも斜視に見える

臨床的意義

正常視機能では問題なし

真の斜視との鑑別が重要

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