糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・網膜疾患

[No.2186] 糖尿病網膜症に対するGLP-1アゴニストの保護効果:論文紹介

清澤のコメント:GLP-1アゴニストは糖尿病網膜症に対しても保護的効果があるだろうというお話です。まず、GLP-1アゴニストとDPP4阻害剤の関連を述べねばなりません。これらは、両方とも糖尿病治療薬ですが、異なる作用機序を持っています。GLP-1アゴニストは、GLP-1受容体に結合して、インスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制することで、血糖値を下げます。一方、DPP4阻害剤は、DPP4酵素の働きを抑制することで、GLP-1の分解を防ぎ、GLP-1の効果を増強します。GLP-1アゴニストは注射剤であり、DPP4阻害剤は経口薬です。さて、そういうわけでこの論文でのDPP4阻害剤効果がGKP-1作動薬の糖尿病網膜症への影響を論じたことになるわけです。今後は対照群の設定は難しいでしょうけれど、おそらくGLP-1阻害薬(オゼンピックなど)自体を用いて(血糖降下作用を超える)糖尿病網膜症をGLP-1アゴニストにより直接抑えられるという研究が行われることが期待されます。

  ーーー論文の要旨引用ーーーー

2型糖尿病患者における糖尿病網膜症の進行に対するジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤の保護効果

Retina . 2016年12月;36(12):2357-2363. doi: 10.1097/IAE.0000000000001098.

Yoo-Ri Chung ほか PMID: 27285457

DOI: 10.1097/IAE.0000000000001098

要約

目的:2型糖尿病患者におけるジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤の糖尿病網膜症(DR)の進行に及ぼす影響を、DR重症度スケールに基づいて検討する。

方法:2005年から2015年までに登録された82例の2型糖尿病患者の医療記録を後ろ向きに検討した。眼底写真はEarly Treatment Diabetic Retinopathy Studyの方法に従って評価した。基準時点の危険因子とDRの進行との関連を検討した。 結果:DPP4阻害剤を投与された28例のうち7例と、他の降血糖薬を投与された54例のうち26例で、Early Treatment Diabetic Retinopathy Studyスケールで1段階以上の網膜症の進行が認められた(P = 0.043)。DPP4阻害剤の投与は、傾向スコアマッチング後の患者でDRの進行を有意に抑制した(P = 0.009)。DPP4阻害剤の投与は、DRの進行のリスクを低下させることと関連していた(P = 0.011)。

結論:DPP4阻害剤の投与は、血糖コントロールの改善に加えて、DRの進行に対する独立した保護因子であった。本研究は、DPP4阻害剤がDRの進行を抑制するという利点を示した最初の研究であり、DPP4阻害剤のDRの進行に対する効果を無作為化二重盲検プラセボ対照試験でさらに評価するための励みとなる前向きなデータを提供する。 

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