糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・網膜疾患

[No.2797] 黄斑円孔の症状、診断、治療とは?

眼科疾患に黄斑円孔というものが有ります。進行すると網膜剥離になるような疾患ですがその症状、診断、治療を簡便に説明します。治療には慣れた術者による手術が必要ですが、黄斑は視力の中心を司る部位ですから、手術後に多少の視力低下が起きたり、また歪みを残したりすることも理解しておいていただく必要があります。

1. 症状

黄斑円孔は、網膜の中心部分である黄斑に穴が開く病気です。主な症状には以下があります。

  • 視力低下: 視力が急激に落ちることがあります。
  • 中心視野の歪み: ものが歪んで見える、直線が曲がって見えるなどの症状が現れます。
  • 視界の中心に黒い部分: 視界の中央に暗い部分や見えない部分が生じることがあります。

2. 診断法

黄斑円孔の診断にはいくつかの方法があります。

  • 視力検査: 視力の低下や視野の異常をチェックします。
  • 眼底検査: 眼底カメラを使用して、網膜の状態を直接観察します。
  • OCT(光干渉断層計): 網膜の断層画像を撮影し、黄斑の詳細な構造を確認します。OCTは黄斑円孔の診断に非常に有効です。

3. 治療法

黄斑円孔の治療法は、病気の進行度や患者の状態に応じて選択されます。

  • 観察: 初期の小さな穴や視力に大きな影響がない場合は、定期的な観察を行うことがあります。
  • 手術: 黄斑円孔が進行して視力に大きな影響を与えている場合、手術が検討されます。主な手術方法には以下があります。
    • 硝子体手術: 目の中の硝子体を取り除き、網膜の穴を閉じる手術です。ガスやシリコンオイルを注入して、穴を閉じるための圧力をかけます。
    • 内膜剥離: 網膜の内側の膜を取り除くことで、黄斑円孔を閉じやすくします。

手術後は、ガスが注入された場合、一定期間うつ伏せの姿勢を保つことが求められることがあります。これにより、ガスが黄斑に圧力をかけて穴を閉じるのを助けます。

まとめ

黄斑円孔は、視力低下や視野の異常を引き起こす網膜の病気です。症状が現れた場合は、早期に眼科医の診察を受けることが重要です。適切な診断と治療によって、視力の改善が期待できる場合がありますので、定期的な眼科検診を心掛けましょう。

 追記:マイアミのバスコンパルマ―眼研究所に嘗てドナルド・ガスという優れた眼科医が居ました。私が神経眼科学でずいぶん世話になった藤野貞(ふじのただし)先生は昭和30年代頃の留学時代にこのガス博士の向かいの部屋で研究をしたものでしたと、私たち後輩によくお話しくださいました。:

ドナルド・ガス(Donald Gass)医師は、黄斑円孔の進行および病態生理の理解において重要な貢献をした眼科医の一人です。彼の研究と観察は、黄斑円孔の診断、治療、および管理において多大な影響を与えました。以下に、ガス医師の貢献について詳述します。

ドナルド・ガス医師の主要な貢献

  1. 黄斑円孔の分類とステージング:

    • ガス医師は、黄斑円孔の発生過程を詳細に観察し、その進行を4つのステージに分類しました。このステージングシステムは、黄斑円孔の診断と治療計画を立てる上で非常に重要な基準となっています。
      • Stage 1: 黄斑円孔の前駆期で、黄斑中心部に円形の黄斑の肥厚と黄斑中心に小さな黄色いフォーベアーヘイロー(foveal cysts)が観察される段階。
      • Stage 2: 部分的な黄斑円孔が形成され、黄斑中心部に小さな穴が見られる段階。
      • Stage 3: 完全な黄斑円孔が形成され、視力低下が進行する段階。
      • Stage 4: 黄斑円孔の進行が完了し、完全な孔が形成される段階。
  2. 診断技術の発展:

    • ガス医師は、眼底鏡検査や蛍光眼底造影(fluorescein angiography)などを用いて黄斑円孔の診断技術を確立し、黄斑円孔の特定と評価を行う方法を提唱しました。
  3. 病態生理の理解:

    • 彼の研究は、黄斑円孔の形成に関与する力学的要因(例えば、硝子体の収縮や牽引力など)を解明しました。これにより、黄斑円孔の発生メカニズムの理解が深まりました。
  4. 治療法の確立:

    • ガス医師の研究は、黄斑円孔の手術的治療(硝子体手術)の進展に貢献しました。彼の観察と研究により、黄斑円孔の手術が効果的であることが示され、多くの患者の視力回復に役立っています。

ガス医師の影響と後継研究

ガス医師の業績は、多くの眼科医や研究者に影響を与え、黄斑円孔の治療法や診断技術の発展に大きく寄与しました。彼の研究は現在でも引用され続けており、黄斑円孔の理解と管理において不可欠な知識となっています。

黄斑円孔の研究と治療におけるドナルド・ガス医師の貢献は、眼科の分野で非常に重要であり、彼の業績は今後も眼科医療において基盤となることでしょう。

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