糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・網膜疾患

[No.2900] 新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドラインを読んで①

このガイドラインが日眼会誌に掲載されました。18ページにわたる大作ですが、眼科臨床医であれば、少なくともその概要に目を通しておきたいところです。以下に、清澤による最初の2章の要約メモを記載します。

1. はじめに

加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration: AMD)は、日本における視覚障害の主な原因となる難治性疾患です。光干渉断層計(Optical Coherence Tomography: OCT)の進歩により、新生血管型AMDの診断、病型分類、治療効果の評価が容易になりました。2004年に国内で承認された光線力学的療法(Photodynamic Therapy: PDT)や、2008年以降使用可能となった抗血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor: VEGF)薬の硝子体内注射により、新生血管型AMDの視力予後が大きく改善されました。

ガイドラインの策定は、標準的な治療の質を確保するために重要です。これまでに国内でいくつかの関連ガイドラインが発表されましたが、病態の理解や治療効果、長期予後に関する知見が深まったことから、ガイドラインの見直しが求められています。そこで、「加齢黄斑変性の分類と診断基準」および「加齢黄斑変性の治療指針」を更新し、新たなガイドラインを作成しました。この中で、用語体系と病期分類を見直し、パキコロイドに関する記載を追加し、治療指針も最新のエビデンスに基づき修正しました。年齢に関する記載は診断基準から削除し、全体を通じて平易な記述を心がけました。

Ⅱ. 用語体系と病期分類の改訂

  1. 用語分類の変更 2008年のガイドラインでは、AMDを「萎縮型AMD」と「滲出型AMD」に分類していましたが、今回のガイドラインでは「萎縮型(Atrophic)AMD」と「新生血管型(Neovascular)AMD」という用語を用います。

  2. 黄斑新生血管の呼称 国際的には「黄斑新生血管(Macular Neovascularization: MNV)」という用語が多く使われています。本ガイドラインでも、CNVという用語は使用せず、MNVを採用しました。

  3. 萎縮性変化の記述 萎縮型AMDでは、網膜外層や網膜色素上皮(Retinal Pigment Epithelium: RPE)、脈絡毛細血管板の境界が明瞭な萎縮病巣は、従来「地図状萎縮(Geographic Atrophy: GA)」と呼ばれていました。これに加え、萎縮病巣をGAと区別するため「黄斑萎縮(Macular Atrophy)」という用語も多く使われています。2018年の国際ガイドラインでは、MNVの有無にかかわらず、境界明瞭な萎縮病巣に対して「黄斑萎縮」を使用することが推奨されました。GAや黄斑萎縮は、新生血管型AMDの末期に見られる線維性瘢痕や囊胞様黄斑変性による網膜外層の萎縮性変化とは区別されます。

  4. 病期分類の改訂 1995年頃から「early ARM」を「early AMD」、「late ARM」を「late AMD」と呼ぶ傾向が強まりました。さらに2000年頃からは、AREDS分類に基づき、カテゴリー2(多数の小型ドルーゼン、または数個の中型ドルーゼン、RPEの色素異常)を「early AMD」、カテゴリー3(多数の中型ドルーゼン、または1個以上の大型ドルーゼン、中心窩外のGA)を「intermediate AMD」、カテゴリー4(中心窩を含むGAまたはMNV)を「late AMD」とする呼び方が主流になりました。本ガイドラインでは、Beckman分類および2019年の米国眼科学会ガイドラインを参考にし、AMDを早期AMD、中期AMD、後期AMD、末期AMDに分類しました。

メルマガ登録
 

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。