糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・網膜疾患

[No.3858] 原田病(Vogt–小柳–原田病)とは?

コロナ感染後に発症した「目のかすみ」―考えられる病気とは?

新型コロナウイルス感染後しばらくして、「片目がかすむ」「頭痛が強い」といった症状を訴える方がいます。実際、眼の診察では角膜の裏側に白っぽい沈着物(豚脂様沈着物)が見られ、さらにOCT(光干渉断層計)という検査で黄斑部にむくみ(浮腫)が確認されることがあります。このような場合、考えられる疾患のひとつが原田病(Vogt–小柳–原田病)です。


原田病とは?

原田病は、自己免疫の異常によって自分の体の中の「メラノサイト」という色素をもつ細胞を攻撃してしまう病気です。眼のブドウ膜(虹彩・毛様体・脈絡膜)や網膜に炎症を起こし、両眼に視力低下やかすみを生じます。日本を含むアジア人に比較的多く見られる病気です。


原田病の主な症状

  • 視力低下・かすみ目:黄斑部に水がたまり、物がゆがんで見える、視力が下がる。

  • 頭痛・耳鳴り:髄膜炎のような症状を伴うことがある。

  • 皮膚や毛髪の変化:病気が進行すると、白髪や皮膚の色素脱失(白斑)が生じることもある。

  • 両眼性:片眼から始まっても、多くは両眼に症状が出てくる。


診断のための検査

  1. 眼底検査・OCT:網膜の下に水がたまっているかどうかを確認。

  2. 蛍光眼底造影:脈絡膜の炎症による漏出を確認。

  3. 前房炎症の所見:角膜後面の沈着物や前房内の炎症細胞をチェック。

  4. 全身症状の確認:頭痛、耳鳴り、白髪・皮膚の変化などを調べる。

これらを総合して原田病と診断します。


治療

治療の中心はステロイド(副腎皮質ホルモン)です。

  • 大量点滴治療(ステロイドパルス):急性期に強い炎症を抑え込む。

  • 内服薬での維持療法:点滴後は内服に切り替え、ゆっくりと減量していく。

  • 免疫抑制薬:再発例やステロイドが効きにくい場合に追加。

治療の目的は、視力を守ることと再発を防ぐことです。早期に適切な治療を開始するほど予後は良好になります。


放置するとどうなるのか?

治療が遅れると、網膜のむくみが長引き、視細胞がダメージを受けて視力が戻らなくなることがあります。また、慢性期には眼底に色素のまだら模様(夕焼け状眼底)が残り、視野が欠けたり夜盲が進行したりすることもあります。


鑑別すべき他の疾患

原田病に似た所見を示す病気もあり、注意が必要です。

  • 急性前部ぶどう膜炎(ベーチェット病やウイルス性など)

  • 中心性漿液性脈絡網膜症:黄斑に水がたまるが炎症所見は少ない。

  • サルコイドーシスによるぶどう膜炎

  • リンパ腫など腫瘍性疾患:眼内炎症に似る場合がある。

  • 感染性ぶどう膜炎(結核、梅毒、ウイルス感染など)

これらを区別するために、血液検査や全身検索を併用します。


まとめ

コロナ感染後のように免疫のバランスが崩れた時期に、原田病のような自己免疫性の病気が発症することがあります。主な症状は「視力低下・かすみ」「頭痛や耳鳴り」で、眼の検査では角膜後面の沈着物や黄斑部の浮腫が特徴的です。治療はステロイドを中心に行い、早期対応が視力の予後を大きく左右します。

「目のかすみ」や「頭痛」が続く場合、単なる疲れ目や偏頭痛と考えず、眼科での精密検査を早めに受けることが大切です。

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