中枢神経系障害を伴ったBウイルス感染 ― まれだが見逃せない眼の合併症
2026年2月19日にオンライン公開されたJAMA Ophthalmologyの症例報告は、きわめてまれな「Bウイルス(ヘルペスB)」感染における眼科症状を詳しく伝えています。 眼底病変はヘルペスウイルス感染症であることが知られる急性網膜壊死(桐沢型ぶどう膜炎)そのものです。日常診療で遭遇することはほとんどありませんが、進行が速く、失明や死亡に至る可能性がある感染症であるため、知っておく意義は小さくありません。
まず背景です。Bウイルスはマカクザルに常在するアルファヘルペスウイルスで、サルでは軽症か無症状のことが多い一方、人に感染すると重篤な脳脊髄炎を起こすことがあります。これまで世界で報告されたヒト感染例は約50例とされ、きわめて稀な人獣共通感染症です。眼への関与はほとんど記録がなく、眼科医にとっても未知の部分が多い領域でした。
本報告の目的は、猿咬傷の既往を持ち、重度の中枢神経系機能障害と両眼のぶどう膜炎を呈した症例を提示し、Bウイルス感染における眼科的特徴と治療反応を明らかにすることでした。
方法としては、香港の三次医療機関で治療された1症例を詳細に解析した記述的報告です。脳脊髄液および硝子体液に対するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査でウイルスDNAを確認し、確定診断に至っています。さらに、連続的な眼底写真撮影によって病変の進行と治療効果を追跡しました。
結果として、眼の所見はきわめて重篤でした。前方ぶどう膜炎、硝子体炎、多発性脈絡網膜炎、網膜血管炎、さらには視神経の関与まで認められました。すなわち、前眼部から後眼部、視神経に至るまで広範囲に炎症が及ぶ像です。診断はBウイルスによる髄膜脳炎を伴う全身感染として確定されました。
治療は、全身投与および硝体内注射によるガンシクロビルを中心とした抗ウイルス療法と、炎症制御のためのコルチコステロイドが併用されました。その結果、病変は治療に反応を示しました。すなわち、本症例は「迅速な診断」と「積極的な抗ウイルス治療」が奏功した例といえます。
結論として、Bウイルス感染では重篤な中枢神経系症状だけでなく、両眼に及ぶぶどう膜炎や脈絡網膜炎、視神経炎を生じうることが示されました。診断が遅れれば失明や生命予後に直結する可能性があります。サルとの接触歴、とくに咬傷歴があり、原因不明のぶどう膜炎や神経症状を伴う場合には、本疾患を鑑別に入れる必要があると考えられます。
本報告は1例の症例報告ではありますが、まれな感染症であっても眼科的合併症が起こり得ること、そして適時の抗ウイルス治療が極めて重要であることを強く示唆しています。今後、異なる地域や患者背景での症例蓄積により、より正確な臨床像が明らかになり、感染関連失明や死亡のリスク低減につながることが期待されます。
【出典】
Wong EYN, Chan CF, Chan PS. Ocular Manifestations of Biopsy-Proven B Virus Infection With Central Nervous System Involvement. JAMA Ophthalmology. Published online February 19, 2026. doi:10.1001/jamaophthalmol.2025.6351



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