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[No.1790] 白内障レンズ選定で眼科医らを贈収賄容疑で書類送検;記事紹介

老眼科医としては触れたくない事件ですが、すべての患者さんと多くの眼科医療従事者にも関心のあるであろう事案なのであえて取り上げます。

当初この事件は、患者及び病院の許可を得ずに、手術記録動画を提供したという個人情報保護の観点で問題が発覚しました。病院医師というものは、企業の研究に協力する場合でもその行為の透明性を保つため、個人で業者から金品を受け取ることは避けます。代わりに病院などの所属組織へ研究費を寄付してもらいます。寄付金は、組織から学会旅費や論文投稿料、公的に使う文具などへの支払い為の研究費として支弁してもらい、一定パーセントが事務処理費として病院などに召し上げられます。この件では、個人で資金を受けたことと、非常勤であっても見做し公務員とされたことで今回の事件になりました。先に起訴されたオリンピック元組織委員のケースと似た構図です。企業側も、その売り込みが稚拙であったため、担当医師に迷惑をかけた印象を受けました。例えば、開業医(や病院)がレンズの納入価格の値引き交渉を行っても、それは犯罪にはならないでしょう。

「ネットには、悪いのはこいつだ」といった論調の記事も見受けられますが、私は長年、真面目に腕を磨き、真摯に患者に接することで築き上げた眼科医としての名声をこの様なことで傷つけ、躓くことになったことは誠に傷ましい限りとおもいます。

築山を築こうとして長いこと努力してきたが、たった一杯の「もっこ」の土がないために、完成できないという故事から転じて、「事が今にも成就するというときに、手を抜いたために完成しない、または失敗すること」をいう「九仞の功を一簣に虧く」という言葉を思い出しました。

贈収賄が疑われて、その後の医師の人生を狂わされた先輩や後輩の件もいくつか見てきました。その当事者は、いずれも真摯な医師であったように感じています。

今回被告の立場に立たされた先生にも、まだこれからの眼科医人生は長いです。ここで気持ちを切り替えて反省し、眼科医としての正道に一層励まれんことを望むものです。

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白内障レンズ選定で80万円授受か 眼科医らを贈収賄容疑で書類送検

華野優気 高井里佳子
写真・図版
大阪府警本部

 白内障患者に使う眼内レンズの選定で便宜を図った見返りに業者から現金80万円を受け取ったとして、大阪府警は19日、奈良県大和高田市立病院の非常勤の眼科医の男(54)=大阪市中央区=を収賄容疑で書類送検したと明らかにした。眼科医に現金を渡したとして、医療機器販売会社「スター・ジャパン」(東京)の社員と元社員で40~67歳の男女5人も贈賄容疑で書類送検した。認否を明らかにしていない。

捜査2課によると、眼科医は2019年12月~21年12月に計3回、同病院で同社の眼内レンズを優先的に選定した見返りに計80万円を受け取った疑いがある。贈賄罪の時効は3年のため、社員らについては19年分を除いた60万円分を容疑とした。同病院での同社のレンズ使用率はこの期間中、それ以前の5割程度から約9割に増えていたという。
 眼科医は公立病院に勤める医師で地方公務員の身分となることから、府警は贈収賄罪が適用できると判断した。
 業界団体の医療機器業公正取引協議会によると、同社は国内各地の医師75人から眼内レンズを使った手術の様子を撮影した動画の提供を受け、総額2千万円以上を支払っていた。眼科医も同社と契約を結び、動画を提供していた。
 協議会は、こうした契約は自社製品の販売を促し、公正な競争を害する行為にあたるとして昨年7月に同社を厳重警告した。動画は患者らに無断で撮影された後、同社に提供されていたという。
 大和高田市立病院の桝田義英院長は19日、コメントを発表し、「事実であれば本院に対する信頼を著しく失墜させる行為で誠に遺憾」とした上で、詳細は改めて報告すると説明した。(華野優気、高井里佳子)
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