渋井展子さんが東京都医師会の会報「TMA」に執筆された「境界知能の子供たち」という記事は、境界知能を持つ子供たちが直面する問題や支援の必要性について詳細に述べられています。境界知能には視覚的情報処理の低下も含まれます。以下、その内容をわかりやすく補足しながらまとめます。思い出してみますと、私が地方の公立小学校に通っていた昭和35年頃にも、特殊学級に入れられるほどでもないが、日々の学業に苦労している度応急性がクラス35人程の中に4-5人ほどはそのような同級生が居たのを思い出しました。
1. はじめに
境界知能の子供たちは、一般の知能を持つ子供たちと知的障害を持つ子供たちの中間に位置し、教育や日常生活で多くの困難に直面しています。彼らは、通常の学級で過ごすことができる一方で、理解や学習速度が他の子供に比べて遅れてしまうことが多く、その結果、周囲からの支援を得にくい状況にあります。本記事は、そうした境界知能の子供たちが直面している現状を把握し、適切な支援を考えるための一助となることを目的としています。
2. 境界知能とは
境界知能とは、知能指数(IQ)が70~85の範囲にある状態を指します。この子供たちは、知的障害と診断されるほどの知能の低下はないものの、平均的な知能を持つ子供たちと比べると学習や日常生活での問題解決能力において遅れが生じることがあります。知的障害の診断基準には該当しないため、学校や医療機関での支援を受けにくいのが現状です。しかし、境界知能の子供たちは、その微妙な立場ゆえに特有の困難を抱えています。
3. 境界知能の子供が抱える困難
境界知能を持つ子供たちは、学校や家庭で次のような困難に直面します。まず、学習の面では、授業の内容が十分に理解できないことが多く、通常のクラスにおいて学業の遅れが生じやすくなります。さらに、周囲の子供たちとのコミュニケーションにも問題を抱えることがあり、いじめや孤立を経験することが少なくありません。また、注意力や問題解決能力に欠けるため、日常生活においても指示を理解できない、独立して行動できないなどの困難が生じることがあります。このような状況が続くと、子供たちは自己評価を下げ、学習意欲や社会的な自信を失うことにつながります。
4. 境界知能の子供が置かれている状況
現在の日本において、境界知能の子供たちは多くの場合、通常の学級で教育を受けています。しかし、知的障害と診断されていないため、特別な支援や指導が提供されることはほとんどありません。その結果、彼らの学習や発達の遅れが見過ごされ、問題が深刻化することがあります。教育現場では、教師の負担が大きく、境界知能を持つ子供たちに十分な支援が行き渡らない現状が指摘されています。また、家庭においても、親が子供の特性を理解しきれず、過度の期待を抱いたり、逆に過小評価することがあり、適切な支援がなされにくいのが実情です。
5. 境界知能についての概念と位置づけの変遷
歴史的に見ても、境界知能という概念は曖昧で、その位置づけは時代や社会によって変わってきました。かつては「軽度の知的障害」として扱われていた境界知能は、近年、通常の知能に近いとされ、一般的な教育環境で過ごすことが期待されるようになっています。しかし、この変化は必ずしも子供たちにとって良い結果をもたらしているとは言えません。通常の学級で学ぶことによって、彼らは周囲とのギャップに苦しみ、適切な支援を受ける機会を失っています。境界知能を持つ子供たちに対する支援の在り方は、今後の教育政策や医療の発展によってさらに見直されるべきです。
6. 最近の知的障害に関する国際的な診断基準と知的障害概念の変化を通して境界知能を考える
最近の国際的な知的障害に関する診断基準では、知的障害の概念が拡大され、IQだけでなく「概念的スキル」「社会的スキル」「実際的なスキル」の3つの側面から判断されるようになっています。これにより、境界知能を持つ子供たちも、より包括的な視点から支援が必要な存在として捉えられるようになりました。
- ①概念的スキル:これは言語、読み書き、数学などの学習に関連するスキルであり、境界知能を持つ子供たちは通常の授業についていくことが難しく、理解に時間がかかることがあります。
- ②社会的スキル:他者とのコミュニケーションや人間関係を築く力です。境界知能の子供たちは、友達を作るのが難しかったり、社会的なルールを理解するのに苦労することが多いです。
- ③実際的なスキル:これは日常生活の中で必要なスキルで、例えば家事や自己管理などが含まれます。境界知能を持つ子供たちは、こうした実際的なタスクを独立してこなすのが難しい場合があります。
7. 境界知能の子供への支援
境界知能を持つ子供たちへの支援は、多岐にわたる必要があります。まず、学校現場での特別支援が重要です。学習面での遅れを補うための個別指導や、社会的スキルを身につけるためのグループ活動が有効です。また、家庭でも、親が子供の特性を理解し、適切なサポートを提供することが求められます。さらに、地域社会においても、境界知能を持つ子供たちが健やかに成長できる環境を整えるためのサポート体制が必要です。医療機関や福祉サービスと連携しながら、子供たち一人ひとりに合った支援が提供されるべきです。
渋井展子さんの記事は、境界知能の子供たちが抱える課題を理解し、適切な支援を考えるうえで非常に有意義なものであり、医療や教育現場において重要な視点を提供しています。
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