暖かくおおらかだった大糸線:朝日新聞への投書採録
清澤のコメント:松本市の高校へは大町市あたりからは毎朝通学してくる同級生が何人も居た。その先の白馬村あたりからの人たちは市内に下宿していたように思い出す。早春賦という唱歌はこの地方の春を歌った歌です。投書者の田中さんは私の妹の同級生だったのかもしれない。(しばらく前の下書きを本日アップしました。)
(声)温かくおおらかだった大糸線
主婦 田中裕美子(滋賀県 67)
半世紀前、私は現在赤字路線で問題になっているJR大糸線を1時間利用して高校に通学していた。
夏はともかく、厳冬期に駅までは雪道を40分以上歩かなければならなかった。除雪車が通った後は楽だった。除雪が間に合わなければ、長靴に雪が入ろうが深い雪の中を歩くしかなかった。体温で溶けた雪がズボンの先で小さなつららになっていた時もあった。でも駅にさえ着けば、列車の中は温かかった。固いシートに正座してぬれたズボンを乾かした。列車内が勉強時間だった。予習復習すべて車内だった。
ある朝のアナウンスは耳を疑うものだった。「今階段を駆け下りています。いましばらく発車をお待ちください」。息を切らして駆け込んできた高校生は、乗客に一礼した。今の時代には、まず聞くことがないであろう、おおらかな構内アナウンス。かけがえのない交通手段の大糸線があったから、高校に通えた。
大糸線は、世界ジオパークの認定エリアを走る。域内には糸魚川―静岡構造線があり、北アルプスの絶景が楽しめる。国の史跡「塩の道」は、最上のトレイルルートでもある。残してください。
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