神経眼科

[No.1958] 多発性硬化症の視神経炎とは?

家族歴に多発性硬化症のある患者さんが来院しました。患者さんの主訴は近見困難であり、老眼鏡処方で症状は改善しています。私たち眼科医にとっては視神経炎と多発性硬化症は関連の深い疾患なのですが、この視神経炎と多発性硬化症の関連を簡便に説明してみます。

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視神経炎は視神経の炎症であり、多発性硬化症(MS)と関連していることが多いです。多発性硬化症(MS)は中枢神経系の脱髄疾患の一つで、神経活動は神経細胞から出る細い電線のような神経の線を伝わる電気活動によってすべて行われています。視神経では髄鞘というもので神経の線が被われていますが、炎症によって髄鞘が壊れて中の電線がむき出しになるような病気が脱髄疾患です。この脱髄が斑状に中枢神経のあちこちにでき、神経症状の再発を繰り返すのが多発性硬化症(MS9です1。病気の原因はそれ以上確定されてはいません。眼底検査では脱髄部位によっては、視神経乳頭の発赤や腫脹が見られることがあります。

視神経脊髄炎(NMOSD)もMSと似たような病気ですが、治療への反応性が違い、抗AQP4抗体が陽性となることが判明してからは免疫学的・病理学的にもMSとは異なる疾患と考えられるようになってきました2。また抗MOG抗体陽性の視神経炎というものも最近注目されています。

視神経炎の主な症状は視力障害で、その視力低下は、しばしば1日または2日以内に最大となり、程度は小さい中心暗点または傍中心暗点から完全な失明まで様々です。患者の多くは軽度の眼痛を有し、眼球運動時により痛く感じられることが多いです3。また、片眼の視神経の伝導が悪いと、瞳孔に対光反応の非対称的な減弱が見られます(rerative afferent pupillary defect: RAPD)。この検査では、患者さんが存在しない病変を意図的に装うことができないので神経眼科医は重要視します。色覚の低下も視神経炎の診断に重要な兆候で、石原式の色覚検査表が異常を示す前から、特に赤い色鉛筆の先端の赤色の認知が弱まったりします。

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