眼瞼痙攣

[No.177] 視力も視野も正常なのに…「眼が開けられなくなる」目の病気、「眼瞼痙攣」:日刊ゲンダイ自著記事です

清澤のコメント:今回のみんなの眼科教室 教えて清澤先生の第2報は視力も視野も正常なのに…「眼が開けられなくなる」目の病気です。

公開日:2021年12月13日 by 清澤源弘  バックナンバー

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写真はイメージ(C)PIXTA

【Q】最近、光がまぶしく感じるようになりました。ネットで調べると「眼瞼痙攣」という眼の病気があるそうですが、それと関係あるのでしょうか?(58歳・女性)
【A】私の専門領域は神経眼科、特に「目を開いていることがつらい」という眼瞼痙攣です。重症になれば、指でまぶたをこじ開けないと眼を開くことが出来ないという人もいます。実際には失明状態であっても、現在の視覚障害者の診断基準は、視力と視野しか評価の対象にしませんから、視覚障害の認定を受けることはできず苦慮するところです。
質問では眼瞼痙攣を疑っておられるようですので、まずはこの「良性原発性眼瞼痙攣」のお話しをしましょう。
眼瞼痙攣は、まぶたの筋肉の攣縮を特徴とする進行性神経障害です。まばたきや刺激感を伴って徐々に始まります。その他の症状には、片方または両方の目のまばたき、目を細める、目を開いたままにするのが難しくなるといったケースや、光過敏症などもあります。 一般的に、けいれんは日中に発生し、睡眠中には消え、目覚めた後に再び現れます。状態の進行につれてけいれんが激しくなり、まぶたは長期間閉じたままになって実質的な視覚障害または機能的失明を引き起こすこともあります。

 無理やり測られた視力は悪くなく、視野も正常です。その症状には、①運動症状(目を開き続けていられない)、②感覚症状(一般的な過敏が現れやすく、その場合強く持続する疼痛を訴える)③精神症状(気分抑鬱)があります。
 眼瞼痙攣と間違われる疾患には、上眼瞼挙筋の衰弱または麻痺による「眼瞼下垂」や「片側顔面痙攣」が含まれます。片側顔面痙攣は顔の左右半分で起き、多くの場合に顔面神経に対して小脳動脈が接触して刺激になっています。同じく間違われやすい「眼瞼ミオキミア」は、疲労に伴って下瞼が横方向にピクピク動くだけの状態です。
 眼瞼痙攣の治療法は、ボツリヌス毒素(ボトックス)の局所注射です。筋肉を弛緩させ、けいれんを止めるように働きます。他の治療オプションには、投薬または手術があります。投薬としてはリボトリールなどが用いられますが、薬への依存性や習慣性には注意が必要です。漢方薬も処方できます。手術は最終手段として眼輪筋切除を美容形成外科で行うことが出来ます。

 また、ストレスは眼瞼痙攣や片側顔面痙攣を悪化させます。家族や友人からのサポートも重要です。ドライアイの合併が多いので、涙液分泌の不足例には涙点プラグを合わせて使う場合もあります。
 「ボツリヌス毒素」という言葉を聞いて、使いたくないという患者さんもいます。あるいは他の診療所でボトックスを使われた経験があり、その結果が不満でもう使いたくないというケースもあります。しかし、十分な聞き取りの上で、適量を適所に慣れた手技で用いれば、ボトックスは相当良好な結果が期待できます。治療を受けた患者さんの約2割が施注直後には不満をいいますが、2~3カ月後に不満を述べた患者さんの半数が再注射を希望しますから、ボトックスの有効例は9割ということになります。眼瞼下垂、かすみ目や複視、目の乾燥などの副作用が発生する場合もありますが、副作用は通常一時的です。
 「眼瞼けいれん、片側顔面けいれん友の会」という組織があり、多数の会員が集まって年に数回の集会を行っています。この疾患に悩んでいる方は入会をお勧めします。また、「眼と心の健康相談室」でも、有料ですが眼瞼痙攣についての電話相談に応じてもらえます。

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