角膜ヘルペス(ヘルペス性角膜炎)とは?──診断のポイントと治療の注意点
風邪をひいたり、ストレスがたまったとき、唇の周りに「ヘルペス」と呼ばれる水ぶくれができることがあります。実はこの「ヘルペスウイルス」は、目にも感染することがあり、それによって「角膜ヘルペス(ヘルペス性角膜炎)」という病気が起こります。今回は、その診察時に見られる特徴的な所見や、背景にある原因、そして治療に使う抗ウイルス薬「ゾビラックス眼軟膏(アシクロビル)」の使い方について、わかりやすくご紹介します。
●角膜ヘルペスの診察での特徴的な所見
ヘルペス性角膜炎では、角膜の一番表面にある「角膜上皮」という層に傷(びらん)ができます。その傷は、他の角膜疾患とは異なり、木の枝のように分かれた形(樹枝状病変)をとるのが特徴です。この模様は特殊な染色(フルオレセイン染色)を使うことで、診察室で目に青い光を当てて観察すると、はっきりと見えてきます。
さらに、病変の先端に小さな膨らみ(ターミナルバルブ)が見られると、ヘルペスによる病変である可能性が高まります。また、視力低下は軽度であることが多く、充血や軽い異物感、しみるような痛みを訴える方が多いです。
●なぜヘルペスが角膜に出るの?
ヘルペスウイルスは一度感染すると、完全には体から消えることはなく、神経の中に潜伏します。体調を崩したり、強い紫外線を浴びたり、ストレスがたまったりすると、ウイルスが再び活性化して角膜に症状が出てくるのです。
とくに、疲労や睡眠不足、風邪や免疫力の低下、ステロイドの使用などが再発の引き金となることが多いため、症状の再発が繰り返される方も少なくありません。
●ゾビラックス眼軟膏による治療とその注意点
角膜ヘルペスの治療には、抗ウイルス薬の「ゾビラックス眼軟膏(成分名:アシクロビル)」を使用します。これはウイルスの増殖を抑える働きがあり、病変の拡大を防ぐことができます。
使用方法のポイント:
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1日5回、一定間隔で点眼する必要があります(例:朝・昼・夕・夜・就寝前)。
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軟膏状の薬なので、目に塗ると一時的に視界がぼやけることがあります。
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点眼前には手をしっかり洗い、清潔を保ちましょう。
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決められた日数をしっかり使用し、症状が軽くなっても自己判断で中止しないことが大切です。
また、ステロイド点眼薬はこの段階では禁忌とされています。ステロイドを使うとウイルスの増殖を助けてしまい、かえって病状が悪化することがあるため、医師の診断なしに自己判断で使用してはいけません。
●再発予防と定期的な眼科受診のすすめ
角膜ヘルペスは一度かかると、繰り返し再発する可能性がある病気です。とくにストレスや紫外線が誘因となるため、日常生活での体調管理や、紫外線対策(帽子やサングラスの使用)も重要です。
また、再発を繰り返すと、角膜の深い層にまでウイルスが入り、視力に影響する「実質型角膜炎」や、「角膜混濁」「角膜潰瘍」など重篤な後遺症を残すこともあります。
そのため、症状が軽くても早めの受診が望ましく、治療中も定期的な診察を受けて、医師の判断で治療の継続や中止を決めていくことが大切です。
まとめ
角膜ヘルペスは、風邪やストレスが引き金になって突然症状が現れることがあります。目がしみる、異物感がある、涙が出るなどの症状があるときには、自己判断せず早めに眼科を受診しましょう。ゾビラックス眼軟膏による早期治療と、医師の指導に基づいたケアが、視力を守るためには欠かせません。
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