清澤のコメント:「視力の低下」を主訴に眼科を訪れる患者は多い。一概に視力が低下したといっても、裸眼視力が下ったという事なのか?はたまた従来の眼鏡をかけていて視難くなったという事なのかでも話は違います。今日はその視力低下を説明してみます。
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典型的には新聞が読めない(近見視力低下:老視?)、遠くがかすむ(遠見視力低下:近視、乱視、白内障など?)、物が2つに見える(複視:単眼複視⇒乱視、両眼で見た時だけの複視⇒外眼筋麻痺?)、中心に見にくい部分がある(中心暗点:加齢黄斑変性、中心性網脈絡膜症、視神経炎?)、歪んで見える(歪視:黄斑前膜、黄斑変性?)、視野の一部が見えない(視野欠損:網膜剥離、網膜出血?)などなど。今回はそれを順次、簡便に説明してみよう。
眼科では視力低下を見ると、まずそれがメガネが合わないだけなのか、それ以外の病気があるのかを分けます。そのために必要なのが、裸眼および矯正での遠見視力と、これも裸眼および矯正で近見視力測定です。これらの操作でしっかりと見えれル眼であれば、近視、遠視、乱視、そして老視(俗称を老眼という)などです。これらには目に遭った眼鏡またはコンタクトレンズを作ってもらうことになります。小児の目の近視化も眼鏡変更の大きな理由です。また成人の目のレンズ度数が比較的短期間で変化することもあって、それには糖尿病で血糖が異常に高かったり、白内障が進んで水晶体が厚くなり、急に近視化したりする場合もありますから、眼鏡が合わなくなった場合にはその原因も考えねばなりません。
物が二重に見える事を複視と言いますが、片眼で見て物が二重に見える状態を単眼複視と言い、これとは異なって両眼を開いた時だけ物が2重に見えるものを両眼性複視と呼びます。単眼性複視は乱視など片方も眼球にその原因があります。両眼で見た時だけ100円玉が2個の見えるという場合には左右の眼球が同じ方向を向いていないという事であり、眼球を動かす筋肉の麻痺などを含むその原因検索が必要になります。
片方の目の中心部分だけに影がかかったように視にくくなる状態を中心暗点と言います。この状態は、黄斑変性で網膜の中心部分に出血が出たり、中心性網脈絡膜症で網膜の中央部の下に水がたまったり、稀ですが視神経の炎症で視野中心部から出る神経線維が活動を停止した場合などにも見られます。この場合には眼底写真などで原因を調べ、それぞれの病態に適した治療法が施されます。
視野の中央部の画像がゆがんで見えるという訴えもしばしば聴取できる症状です。これは眼内で光が像を結ぶ網膜にしわができている場合に診られます。典型的には黄斑前膜という状態でこれは訴えられます。網膜断層像をOCTという機械で撮影すれば、網膜の表層に薄い膜形成が起きていてこれが網膜にしわを作っている様子を克明に見ることができます。状況によっては硝子体切除という眼球内の手術で網膜上に発生した線維性の膜を取り除く手術が行われます。
中心またはそれ以外の視野の一部が見えないという場合には網膜静脈分枝閉塞症のように網膜上に出血している場合もありますし、網膜の一部が眼球内面から剥がれて網膜剥離を起こし、その剥がれた部分の視野が失われているという場合もあります。緑内障でも病気が進行すると緑内障特有の視野欠損が視野の上半分を占めるという事もあります。視野の欠損は欠損した部分の網膜が光に反応しないのですが、その部分が黒く見えているわけではなく、灰色の中間色に見えているので、そのつもりで医師が視野のテストをしないと本人が先に気付くことはむつかしいのです。周辺から起きた視野の欠損が中央に広がれば、当然中心部の網膜が担う視力は明らかに低下が始まります。
今日は、様々な視力低下を示す代表的な疾患を大まかにお話してみました。
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