網膜変性疾患診療のポイント(平形寿彬、順天堂大)
網膜色素変性症とも呼ばれる遺伝性網膜ジストロフィ(IRD)、その概要はこの様な疾患を持つ患者さんにも参考になるでしょう。
網膜変性疾患診療のポイントが日本の眼科2025年18-24[分かり易い臨床講義]に掲載されています。その要旨をなるべく平易な文章として抄出し採録します。
はじめに
2023年、日本で初めてRPE65遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィ(IRD)に対する遺伝子治療が保険適用されました。IRDはこれまで治療法がないとされていましたが、新たな治療法の研究開発が進んでいます。そのため、IRD(遺伝性網膜ジストロフィ)の診療はますます重要になってきます。網膜色素変性とも呼ばれる遺伝性網膜ジストロフィとは?この記事は、患者さんにも参考になるでしょう。
網膜変性疾患の診療の進め方
- 問診 網膜変性疾患の診療では、丁寧な問診が非常に重要です。患者の症状の自覚や進行の様子、家族歴、既往歴などを詳しく聴取します。特に、若年期からの症状や急性に発症した症状は、IRD(遺伝性網膜ジストロフィ)や後天性疾患の鑑別に役立ちます。
- 眼科検査 視力検査、眼底写真、光干渉断層眼底写真(OCT)、網膜電図(ERG)などの検査を組み合わせて診断を行います。特に、FAFとERGが診断の大きな手がかりとなります。
網膜色素変性と鑑別を要するIRD
網膜色素変性(RP)は多くの原因遺伝子が報告されており、遺伝形式も様々です。遺伝性網膜ジストロフィの患者は幼少期から中年期にかけて夜盲を自覚し、進行と共に羞明や視野狭窄、視力低下を感じます。眼底写真や眼底自発蛍光写真FAF、ffERG(全視野ERG)などの検査が診断に役立ちます。
RPE65関連網膜変性疾患
RPE65遺伝子変異による疾患は、Leber 先天盲(LCA)や早期発症重症網膜ジストロフィ(EOSRD)が主な対象です。若年時に発症し、夜盲や視力障害を認めます。治療は若年齢時に行う方が効果が大きいとされています。
黄斑部後天性疾患と鑑別を要する遺伝性網膜ジストロフィ(IRD)
卵黄状黄斑ジストロフィ(Best病)は、加齢黄斑変性や中心性漿液性網脈絡膜症と鑑別が必要です。原因遺伝子はBEST1であり、特徴的な卵黄様の眼底所見を認めます。FAFやOCTが診断に役立ちます。
後天性の網膜変性疾患の特徴と診断のポイント
急性潜在性帯状網膜外層症(AZOOR)や自己免疫網膜症(AIR)は、IRDと鑑別が難しい後天性疾患です。発症起点の自覚症状や進行スピードが重要な鑑別ポイントとなります。OCTやERGが診断に有用です。
COVID-19に関連した網膜疾患
COVID-19感染後に発症する網脈絡膜疾患として、PAMMやacute macular neuroretinopathyが報告されています。診断にはOCTが有用であり、OCTAの活用も考えられます。
おわりに
IRDに対する治療は世界中で研究開発が進められており、治療法がなかった時代から治療を提供できる時代に変わりつつあります。詳細な患者情報と様々な検査を組み合わせることで、正確な診断に近づくことが可能です。
このように、網膜変性疾患の診療は多岐にわたる知識と技術が求められますが、適切な診断と治療が患者の生活の質を向上させることが期待されます。
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