緑内障ガイドライン(第5版) 診療ガイドラインのエッセンスという記事が木内良明広島大名誉教授によってまとめられ、日医雑誌153巻4号に掲載されています。緑内障は普段よく扱う疾患ですが、分かり易くまとめられていますので更に短縮して採録してみましょう。
はじめに 緑内障は進行性の視神経障害を引き起こす病態で、WHOによると2020年の世界の緑内障患者数は約7,600万人、2030年までに約9,500万人に増加すると予測されています。日本では中途失明原因の第1位で、40歳以上の20人に1人が発症しています。糖尿病網膜症の治療が進歩した一方で、緑内障による視機能の喪失は依然として深刻です。
ガイドラインの要点・改訂点 第5版のガイドラインはMinds方式に則り、臨床的に重要なクリニカルクエスチョン(CQ)を設定し、システマティックレビュー(SR)を行いました。
クリニカルクエスチョン(CQ)
- 高眼圧症の治療基準:眼圧が高い場合、危険因子があれば治療を開始します。
- 眼底所見に緑内障性変化があるが視野に異常がない場合:進行の危険因子がある場合は治療を推奨します。
- 視野障害が進行する症例の手術適応:弱く推奨します。
- チューブシャント手術 vs 線維柱帯切除術:線維柱帯切除術を推奨します。
- 線維柱帯切除術後のステロイド点眼:強く推奨します。
- 抗菌薬の使用期間:しばらく使用を推奨しますが、期間は明確ではありません。
- 線維柱帯切除術と白内障手術の同時実施:視機能改善につながるときに推奨します。
- 閉塞隅角緑内障の第一選択治療:白内障手術を強く推奨します。
- 閉塞隅角症疑いの治療:一律に治療を開始せず、急性発作の眼には積極的に治療します。
バックグラウンドクエスチョン(BQ) 妊娠中・授乳中の緑内障治療についてのデータが少ないため、原則的に点眼薬を中止します。
フューチャーリサーチクエスチョン(FQ)
- 第二選択薬の選定:効果や副作用に関するエビデンスが少ないためFQとしています。
- 手術的治療への移行タイミング:点眼薬を増やしても効果が不十分な場合、手術を考慮します。
- 眼圧下降以外の治療法:現時点で眼圧下降以外に推奨できる治療法はありません。
一般診療におけるガイドライン活用のポイント ガイドラインの推奨は絶対的なものではなく、個々の患者の状況に応じて適用します。
患者説明についての注意点 緑内障診療では正しい病型診断が重要で、治療方針決定には患者の希望を参考にします。
参考:緑内障診断ガイドライン(第5版)日眼会誌2022:126:85-177
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