眼科編(10)加齢で増える目の痛み 体以外の原因も少なくない
年を取ると便秘気味になったり、痛みが出たりする。原因は体と心が変化して全体のバランスが崩れるからだ。例えば、加齢により歯を失い、消化液の分泌が低下すると便秘になりやすくなる。
内臓では、腎臓のように70歳で血流が若い頃の半分近くに減少するものの、老廃物のもととなる筋肉量や働きも低下するため全体のバランスがとれる場合もある。しかし、無理すれば当然、具合が悪くなり不調となる。
不調は痛みとして表れる場合も多い。一般的に痛みは年齢によって大きく変化はしないが、足の甲など末端部分は加齢で鈍くなりがちで、内臓の痛みも弱くなる場合がある。高齢者の心筋梗塞や腹膜炎の発見が遅れるのは、そのせいだともいわれている。
国際疼痛学会は痛みを①侵害受容性②神経障害性③心因性に大別している。最近は目の痛みもこの大別に従って治療が行われる。老人ならではの眼痛も多い。自由が丘清澤眼科(東京・目黒区)の清澤源弘院長が言う。
「①は感覚神経が刺激されて生じる痛みで、けがや感染症による炎症など急性の痛みなどがこれに当たります。目の病気で言えば霰粒腫、角膜炎、強膜炎、急性緑内障、視神経炎などです。高齢者に多いのは結膜弛緩症です。顔のシワと同じように白目の表面を覆っている結膜が緩んで、こすれることで生じます。非ステロイド系鎮痛剤が有効です」
②は神経の圧迫など感覚神経自体の傷害で起こる痛み。ジンジンとした鈍い痛みと感じられ、慢性的疼痛や難治性疼痛に進行しやすい。代表的なものに、帯状疱疹治癒後の神経痛、ドライアイ症候群の眼痛などがある。非ステロイド系鎮痛剤は効きづらい。
③は精神的ストレスなど心理社会的要因によって起きるとされる痛み。身体的な支障が見つからないため、受診しても原因がわからず治しづらい。かつては「身体表現性障害」という言葉が使われていたが、いまは「身体症状症」という言葉が用いられているという。
「この身体症状症は、(A)苦痛や生活への支障がある身体症状があること(B)身体症状や健康に関する極端な思考・感情・行動のうち、2つを満たす病態を含みます。高齢女性に多い眼瞼けいれんでは過剰な瞬目、精神的なうつ、それに感覚過敏を示しますが、この時に見られる眼痛もこれに含まれるものがあります。この治療には神経心理学的なカウンセリングも有効な場合があるでしょう」
問題はこれら3つの痛みに対して使うべき薬剤や治療がまったく違うのに、3種は互いに重複していて各症例は明確に3分できないことだ。しかも医師によっては、こうした分類自体に無頓着なケースもある。
痛みには3つの分類があることを知ったうえで自身の症状がどうであるかを考えて受診することが大切だ。
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