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清澤のコメント:本日エタンブトール視神経症が疑われる患者さんの受診を受けました。この患者さんでは視力視野もよく、現在はすでにエタンブトールの投与が終了していましたが、診療の要点を思い出してみようと検索をしましたら、「エタンブトール(EB)による視神経障害に関する見解: 日本結核・非結核性抗酸菌症学会 非結核性抗酸菌症対策委員会」という記述がありました。毎日色覚を含む自己評価を求めるように指導されています。経験的には半年くらいかけてゆっくりと回復を示す例が多いように感じています。
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エタンブトール(EB)は結核および非結核性抗酸菌症の標準治療薬として日常的に使用されている。特に非結核性抗酸菌症の場合には 1年以上の長期にわたる使用や,再発再燃例に対して繰り返し使用することにより,重大な副作用として視神経障害による視力障害の発生が危惧される。
そこで日本結核・非結核性抗酸菌症学会,日本眼科学会,日本神経眼科学会の3学会合同で「EB投与に際して行うべき眼科的副作用対策」を提言する。
- EB投与前に行うこと 投与前に,副作用,早期発見のための最適な自己検査法,診察間隔,眼科医との連携について患者へ十分に説明する。
( 1 )患者への説明 まず,EB内服の必要性,副作用として視神経障害による視力低下や視野狭窄を生じる可能性,症状が出現した後にも内服を継続した場合には不可逆性の視力障害が残る可能性があることを説明する。
( 2 )視神経障害の初期症状と自己評価 初期の自覚症状について説明し,理解してもらう。すなわち,かすんで見える(霧視),注視しているものが見づらい,黒ずんで見える,色調が変わって見えるなどの視神経障害の初期に出現するわずかな変化を見逃さず,早期発見に努める。 早期発見のために患者自身で実施可能な評価法とし て,以下の具体的な方法を教育する。 「裸眼もしくは常用眼鏡を用いて,毎朝,片眼ずつ,一 定の距離で新聞・雑誌・コンピューター・スマートフォンなどの文字を読み,前日に比べて見にくくなっていないかを確認する」。もし見にくくなった場合にはまずEB 内服を中止する。
( 3 )投与前の眼科診察 投与前にEB処方医は眼科に診療情報提供書を作成し, 眼科にて,眼科一般検査(細伱灯顕微鏡検査,眼底検査),視力検査等を行う。視神経炎,糖尿病,アルコール依存症,乳幼児は原則,EB投与は禁忌である。
- 診察間隔 投与中は定期的に眼科で評価を受ける。自覚症状がなければ 1 ~ 3 カ月ごと,自身で毎日自己評価できる患者は3カ月に一度,眼科で定期的に評価を受けることが早期発見に重要である。
- 眼科での検査内容 視力検査(矯正視力)は必須で,視野検査も行う。最近はコンピューターによる自動静的視野計が普及しているが,視力低下が高度で,中心暗点がある場合には自動視野計は不向きで,可能であれば手動のGoldmann動的視野計が適している。また,可能であれば,中心フリッカ検査,色覚検査(石原式),アムスラーチャート(簡易な中心視野検査)も早期発見に有用である。
上記の提言を順守することを前提に,EB使用を判断した処方医が患者に説明すべき要点を以下に示す。
患者への説明内容 ・治療上EB内服の必要性があること。
・副作用として視神経障害による視力低下や視野狭窄がおこることがあり,症状が出現した後も内服を継続した場合には不可逆性の視力障害が残る可能性があること。
・EB服薬開始前にEB処方医が作成した診療情報提供書を持って眼科を受診し,EB投与に支障がないかを判定してもらうこと。
・投与中は定期的に眼科を受診し,視力検査や視野検査などにより副作用の有無を評価をしてもらう必要があること。
・自身で「毎朝,片眼ずつ一定の距離で新聞・雑誌・コ ンピューター・スマートフォンなどの文字を読み,前日に比べて見にくくなっていないかを確認する」こと。
・視力に異常を感じた場合にはまずEB内服を中止し,すみやかに眼科を受診して再度評価を受けること。
以上が視神経障害の早期発見に重要であることを説明 する。
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