神経眼科

[No.770] 半盲をきたす中大脳動脈の脳卒中では脳機能低下は反対側大脳半球にまで及ぶ:

半盲をきたす中大脳動脈の脳卒中では脳機能の低下は同側だけでなく反対側の大脳半球にまで及ぶ:

神経眼科医清澤のコメント:大脳皮質に病変を生じてその部分が担う作用が弱まった場合、中枢神経のその部分が担う局在機能の急性の低下が観察されます。このほかに、その機能が低下した部分が神経線維を送っている広範な領域でも活動の低下が同時にみられ、その部分の神経欠落症状が現れます。ですから、急性期の神経症状では脳梗塞などで脳が損傷された部分の担う機能よりも広範な欠損症状を示します。やがて、「半死、半生」であったペナンブラと呼ばれる虚血領域は、回復する部分と壊死する部分にやがて分かれて、症状は安定してゆきます。このような急性変化は脳梗塞の領域を超えて大脳の反対側まで広がっているという事に気づきまとめたのが32年前の私のこの報告です。

 いくつかの研究では、最初の 1 週間で反対側の血流が減少し(Transhemispheric diaschisis)、その後徐々にベースラインに戻ることが示されています。反対側の代謝のほとんどの測定値(および機能)は、血流と同様の時間経過を示します。つまり、減少してから徐々に回復します。

最近、陳旧性の半盲のある患者さんを拝見したのでこのことを思い出しました。

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#同名半盲を引き起こす中大脳動脈の脳卒中:陽電子放出断層撮影

概要

同名半盲を引き起こした中大脳動脈領域を含む孤立性脳卒中の 3 ~ 30 日後に、 8人の患者を18 F-フルオロデオキシグルコース陽電子放出断層撮影法で評価した。びまん性代謝低下は、損傷した大脳半球全体に存在し、臨床検査または神経画像によって明らかに虚血性ではない皮質領域にも存在した。損傷した半球の一次および連合視覚野におけるグルコース代謝は、47%以上減少した( p < 0.01)。損傷を受けていない半球の代謝はそれほど深刻な影響を受けていませんでしたが、カルカリン(鳥距溝) (40%; p < 0.01) と外側後頭皮質 (視覚連合野)35%; p < 0.05)で有意な減少が見られました。

Annals of Neurology Brief Communication

Middle cerebral artery strokes causing homonymous hemianopia: Positron emission tomography

Motohiro Kiyosawa MD, Dr Thomas M. Bosley MD, Michael Kushner MD, Dara Jamieson MD, Abass Alavi MD, Martin Reivich MD  First published: August 1990 

https://doi.org/10.1002/ana.410280212

 

Abstract

Eight patients were evaluated with 18F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography between 3 and 30 days after isolated stroke involving the middle cerebral artery territory that caused homonymous hemianopia. Diffuse hypometabolism was present throughout the damaged cerebral hemisphere, even in cortical areas not obviously ischemic by clinical examination or neuroimaging. Glucose metabolism in primary and association visual cortex of the damaged hemisphere was decreased by more than 47% (p < 0.01). Metabolism in the undamaged hemisphere was less profoundly affected, but significant decrements were found in calcarine (40%;p < 0.01) and lateral occipital cortex (35%;p < 0.05).

「血管を識別し、脳卒中を認識する」特に中大脳動脈梗塞の症状。

 

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